研究課題/領域番号 |
18J11985
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
島田 洋樹 東北大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 肥満高血圧 / 副腎 / アルドステロン / CYP11B2 |
研究実績の概要 |
本研究では副腎CYP11B2発現誘導能を有する脂肪細胞由来の未知因子を肥満高血圧の責任因子として同定し、その副腎への作用機序を解析することにより肥満高血圧発症の分子機序を解明することを目的としている。脂肪細胞への分化能を有するマウス線維芽細胞由来3T3-L1細胞を脂肪細胞へと分化させ、培養上清を取得した。質量分析装置による測定では、培養上清中にアンジオテンシンⅡは検出されなかった。この結果は、アンジオテンシンⅡ以外の未知の液性因子がCYP11B2の発現を誘導している可能性を強く示唆している。次に、ヒト副腎腫瘍由来H295R細胞に脂肪細胞より取得した培養上清を添加し、CYP11B2の発現誘導を指標に分子量による分画を行った。その結果、CYP11B2発現誘導を担う特定の画分を見出した。次にCYP11B2発現誘導能を有する画分を質量分析装置により解析し、液性因子の同定を行った。その結果52種の候補因子を同定した。さらに、52種の候補因子の中からシグナルペプチドの有無をSignalP4.1により推定し、シグナルペプチドを有すると考えられた12種を同定することができた。また、CYP11B2の発現誘導を指標にイオン交換クロマトグラフィーを用いた分画を行ったところ、複数のCYP11B2発現誘導活性をもつ画分を取得することができた。この活性画分に含まれると考えられる因子をHEK293T細胞を用いた分泌蛋白質の大量発現系を構築し、因子を大量に取得した。精製した因子をH295R細胞に順次添加し、CYP11B2の遺伝子発現を確認したところ、数種類の因子にCYP11B2発現誘導活性があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪細胞への分化能を有するマウス線維芽細胞由来3T3-L1細胞を脂肪細胞へと分化させ、培養上清を取得した。 次に、ヒト副腎腫瘍由来H295R細胞に脂肪細胞より取得した培養上清を添加し、CYP11B2の発現誘導を指標に分子量による分画を行った。その結果、CYP11B2発現誘導を担う特定の画分を見出した。次にCYP11B2発現誘導能を有する画分を質量分析装置により解析し、液性因子の同定を行った。その結果52種の候補因子を同定した。さらに、52種の候補因子の中からシグナルペプチドの有無をSignalP4.1により推定し、シグナルペプチドを有すると考えられた12種を同定した。12種の候補因子中にはタンパク分解酵素XとXの作用により活性化する因子Yが含まれていた。このことに着目し、タンパク分解酵素阻害剤による検討と活性化したYの受容体に対する阻害剤の検討を行った。その結果、それぞれの検討において培養上清が有すCYP11B2発現誘導活性は低下していた。以上から、タンパク分解酵素XとXの作用により活性化する因子Y は脂肪細胞培養上清におけるCYP11B2発現誘導因子の有望な候補因子であることが示唆された。 また、CYP11B2の発現誘導を指標にイオン交換クロマトグラフィーを用いた分画を行ったところ、複数のCYP11B2発現誘導活性をもつ画分を取得することができた。この活性画分には新規因子Zが含まれることがウエスタンブロット法により示唆された。加えて、申請者はHEK293T細胞を用いた分泌蛋白質の大量発現系を構築し、HEK293T細胞に新規因子Zを大量発現させ、アフィニティ精製により新規因子Zを大量に取得した。精製した新規因子ZをH295R細胞に添加したところCYP11B2の発現を誘導した。このことから新規因子ZはCYP11B2発現誘導因子の1つであることが強く示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在同定されているCYP11B2発現誘導因子が生体内においても作用するのかどうか検討を行う。また、脂肪細胞の培養上清に含まれるCYP11B2発現誘導因子は多種に渡っていることが示唆されており、それらの同定は肥満高血圧の病態の理解に重要であることから、引き続き脂肪細胞培養上清中のCYP11B2発現誘導因子の同定を行う。
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