本研究では副腎アルドステロン合成酵素(CYP11B2)発現誘導能を有する脂肪細胞由来の未知因子を肥満高血圧の責任因子として同定し、その副腎への作用機序を解析することにより肥満高血圧発症の分子機序を解明することを目的としている。脂肪細胞への分化能を有するマウス線維芽細胞由来3T3-L1細胞を脂肪細胞へと分化させ、培養上清を取得した。次に、ヒト副腎腫瘍由来H295R細胞に脂肪細胞より取得した培養上清を添加し、CYP11B2の発現誘導を指標に分子量による分画を行った。その結果、CYP11B2発現誘導を担う特定の画分を見出した。次にCYP11B2発現誘導能を有する画分を質量分析装置により解析し、液性因子の同定を行った。その結果52種の候補因子を同定した。さらに、52種の候補因子の中からシグナルペプチドの有無をSignalP4.1により推定し、シグナルペプチドを有すると考えられた12種を同定することができた。また、CYP11B2の発現誘導を指標にイオン交換クロマトグラフィーを用いた分画を行ったところ、複数のCYP11B2発現誘導活性をもつ画分を取得することができた。この活性画分に含まれると考えられる因子と前述の12種についてHEK293T細胞を用いた分泌蛋白質の大量発現系を構築し、因子を大量に取得した。精製した因子をH295R細胞に順次添加し、CYP11B2の遺伝子発現を確認したところ、数種類の因子にCYP11B2発現誘導活性があることを見出した。
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