代表者は、アセチルCoA合成反応を触媒する固定化ピルビン酸-フェレドキシン酸化還元酵素(PFOR)を初めて開発した(Bioresour. Technol. 2017)。PFORによる反応では電子が生じるため、電子受容体が溶液中に必要となる。より実用的な系のためには、電子受容体が溶液中に存在しないのが望ましい。本研究ではPFOR固定電極の開発を目的とした。電極へのPFORの固定で、生じた電子を直接取り出すことが可能となる。 まずCitrobacter sp. S-77由来PFORのカーボンブラック(以下CB)への担持を、タンパク質定量、酵素活性測定で評価した。CBへのPFORの吸着は示唆されたが、PFOR吸着CBによる反応ではアセチルCoAは検出できなかった。この結果はCB表面への吸着によるPFORの変性、失活を示唆している。 次に、PFORをCBへ担持させる際のスペーサーとして、電子の受容が可能なPdRh錯体(以下PdRh)を導入し、酵素自身のCBへの吸着による変性の防止を着想した。PdRhにCB表面と特異的に結合する部位を導入することで、酵素反応で生じた電子がPdRhを経てCB、電極へ移動することをねらう。錯体の使用を着想したのは、本課題と関わる別課題(Chem. Asian J. 2018)で報告者が金属錯体を研究対象としていたためである。 これまでに、PFORが触媒する反応でPdRhが電子受容体として機能可能か評価した。複合化前のPFORとPdRhの反応を緩衝液中で試み、紫外可視分光法や高速液体クロマトグラフィー分析で評価した。前者ではPdRhの吸収スペクトルの変化が、後者では添加した錯体量に対し非常に微量ではあるがアセチルCoAの生成が確認された。これらの結果より、PFORが触媒する反応においてPdRhが電子アクセプターとして機能している可能性が示唆された。
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