研究実績の概要 |
今年度は準解析的銀河形成モデルを用いて、超大質量ブラックホールの成長速度・成長時間がどの程度であるのかに着目して研究を行なった。超大質量ブラックホールは主にガス降着によって成長する。本研究ではこのガス降着のタイムスケール (成長時間) としてブラックホール周囲のガスの角運動量輸送のタイムスケールを初めて考慮した。このモデルによって観測される活動銀河核の高度関数を幅広い赤方偏移で説明可能である。このモデルを用いて, 今年度後半にはブラックホールの成長速度についての理論予測を行なった。その結果、軽いブラックホールほど, また高赤方偏移ほど、ブラックホールの成長には超臨界ガス降着が大きく寄与していることを示した。この理論予測は従来の解釈とは異なるものであるにも関わらず、現在の観測結果と無矛盾である。将来観測において、このモデルの妥当性を検討することが急務ではあるが、我々の研究は超大質量ブラックホールの進化に対する従来の描像を塗り替える可能性がある。また、赤方偏移 6 程度の初期宇宙で見つかっている、太陽の10億倍程度の質量を持つ超大質量ブラックホールの誕生時の質量が太陽の100から1000倍程度であっても観測結果と矛盾しない可能性を示唆する。 今年度の研究成果は主著論文3本にまとめられた。1本は2019年2月に英国王立天文学会誌 (MNRAS) から出版済み、1本は MNRAS に投稿済み, そして残り1本が投稿準備中である。また、研究成果は国際研究会2件 (うち1件は招待講演)、国内研究会4件 (うち1件は招待講演) で口頭発表を行なった。
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