研究課題/領域番号 |
18J12157
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 健太 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 記憶 / 成人期 / アウトプットモニタリング |
研究実績の概要 |
自閉症者の記憶の特徴に自己に関する記憶の低下がある。一般的に自己と関連付けて憶えると記憶成績が高まるが(自己参照効果),自閉症者には自己参照効果がみられないことが報告されている。自閉症者の自己に関する記憶の低下の現象を報告した研究はあるものの,なぜ低下が生じるのかを検討した研究はみあたらない。そこで,自閉症者の自己に関する記憶の低下の要因を明らかにすることを目的とし,1)符号化(情報の入力)に問題はないのか,2)貯蔵(情報の保持)も問題はないのか,3)ソースモニタリング(いつ,どこで,どのようにといった情報源を特定する機能)は保たれているのか,を検討した。実験の結果,自閉症者の自己に関する記憶の低下は情報の入力や保持の問題ではなく,ソースモニタリングの低下であることが示唆された。 さらに記憶機能が担う行動選択に着目し,成人自閉症者が抱える問題の一つである同じ失敗の繰り返しについて検討した。これまでに自閉症者の同じ失敗の繰り返しについては,障害特性である固執性で説明されてきた。しかしながら,定型発達者を対象とした研究はアウトプットモニタリングのエラーが同じ失敗の繰り返しの要因であることを報告している。アウトプットモニタリングとは,自身がおこなった行為に対する判断である。自閉症者を対象としてアウトプットモニタリングを検討した研究はみあたらない。一方で,自閉症者のルールの記憶にも着目した。ルールの記憶が低下していれば同じ失敗を繰り返すことになる。そこで,1)自閉症者のアウトプットモニタリングと同じ失敗の繰り返しの関連を検討する,2)自閉症はルールの記憶は保たれているのか,を検討した。実験の結果,自閉症者の同じ失敗の繰り返しはアウトプットモニタリングの低下によって引き起こされていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り,成人自閉症者の自己に関する記憶の低下の要因と同じ失敗の繰り返しの要因に関する実験を実施できている。論文投稿については,自閉症研究のトップジャーナルの一つであるJournal of Autism and Developmental Disordersに1報が採択された。現在も1報が同ジャーナルで査読中である。学会発表では国内で3報の報告をおこなった。しかしながら,本年度完了予定であった実験が年度をまたいでしまったため,やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年である本年度は,これまでの研究結果から得られた成人自閉症者のモニタリング機能(詳細な情報を特定する機能)の低下が同じ失敗の繰り返しに及ぼす影響について,より知見を深めるための実験をおこなう。実験の結果は国内外の学会や国際誌への投稿にて発表をおこなう予定である。
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