研究課題/領域番号 |
18J12174
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
徳丸 和樹 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | インプリント / セラミックス / 固体酸化物型燃料電池 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究により,積層インプリントプロセスによる微細波型構造を持つ電解質の作製に成功している.電解質の形状最適化のためには,積層インプリント時の積層界面構造の制御が必要となるが,制御方法はいまだ確立できていない.そこで本年度はインプリント加工試験によるプレス条件が電解質と電極との積層界面の形状に与える影響の調査,シミュレーションによる積層コンパウンドシートの変形プロセスの把握を行った. 積層インプリントでは材料の流動によって界面形状が形成されるため,プレス制御を行わない場合は膜厚にムラのある波型構造となる場合がある.具体的には,モールド凹部にあたる部分の電解質膜厚がモールド凸部にあたる膜厚の300 %以上となる.積層グリーンシートは粘弾性特性を持つため,積層界面形状はプレス速度の影響を受けると考えられる.そこで,プレス速度を制御し積層界面形状の制御を試みた結果,プレス速度を0.01 m/sと低く設定することにより,積層上層の膜厚のムラを10 %以下まで抑えることに成功した. 積層インプリントのシミュレーションには,物理シミュレーションソフトANSYSを用いた.当初の計画ではCOMSOLの使用を想定していたが,大変形モデルの解析が困難であったため,途中よりANSYSを使用した. 超弾性モデル(Mooney-Rivlinモデル)を使用したシミュレーションにより,モールド凸部にあたる部分の電解質厚が小さくなることの再現に成功した.しかし,超弾性モデルでは、材料の粘性の影響を考慮することができず,プレス速度による電解質形状の変化を再現できない.そこで,現在は粘弾性モデルによる積層インプリント法のシミュレーションを作成中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究計画では,積層インプリントプロセスにおける積層界面の構造の最適設計,シミュレーションによる加工条件の最適化,発電試験による性能確認を目標としていた.このうち,シミュレーションによる加工条件の最適化については,加工実験による実現象のデータ取得により,プレス速度と材料の粘弾性が界面形状の形成に大きく影響を与えていることが確認でき,シミュレーションにおいて考慮すべき加工パラメータについて決定することができた.粘弾性モデルを用いた積層インプリントプロセスのシミュレーションを行う準備として,動的粘弾性特性試験による材料特性の取得,超弾性モデルを用いた非プレス速度制御時の断面形状の再現については終了しており,使用するシミュレーションソフトの変更という予期せぬ事態はあったが,おおむね順調といえる. 発電試験については,予定より遅れているといえる.理由としては,当初使用予定であった発電試験装置が他の研究との兼ね合いにより想定通りに使用できなかったためである.そのため,発電試験自体は行うことはできたが,波型電解質の性能を評価するには十分なデータを習得できたとは言えず,今後も発電試験を行っていく必要が出てきた. このため,全体的な進捗状況としてはやや遅れていると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては,当初に予定通り,シミュレーション結果を用いた積層インプリントにおける積層界面形状制御技術の確立,波型以外の電解質パターンの作製を試みる.それに加え,前年度までに終了できなかった波型電解質燃料電池の発電試験についても行っていく. シミュレーションについては,粘弾性モデルを使用した積層インプリントシミュレーションにより,加工条件を変えた際の積層界面構造の変化を把握する.具体的には,プレス速度,材料の粘弾性をパラメータとして計算を行う.またそれに合わせて実実験でも同様のパラメータによる加工を行い,シミュレーション結果の整合性を評価する.それらの結果をまとめ,積層インプリントにおける積層界面形状制御技術の確立を目指す. 発電試験については,前年度の反省から,発電装置を新しく組み上げ,本研究の専用とすることにより,他の実験との兼ね合いを考慮せずに実験を行っていく.現在,発電試験に協力頂いている研究室に使用されていない発電試験装置が存在するため,それを修理し利用する予定である.現在すでに修理を進めており,5月までには発電試験を行うことが可能になる.これにより,前年度の遅れを取り戻す予定である.
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