本年度の研究においては、昨年度までの研究で得られた積層インプリント実験の実験データより、有限要素法を用いた積層インプリントのシミュレーションモデルの作製、また、生体機能表面の模倣への応用に取り組んだ。 本研究は被インプリント材料としてセラミックスと熱可塑性樹脂のコンパウンドを用いており、粘弾性を示すため、一般化マクスウェルモデルを用いた有限要素解析を行った。モデル作成に当たっては、実験に使用した材料に対し、圧縮緩和の繰り返しによる粘弾性試験を行い、得られた粘弾性特性をもとにデータフィッティングを行い、一般化マクスウェルモデルの数式を得た。得られた数式をもとに二層コンパウンド材料への積層インプリントの有限要素解析を行ったところ、実験データと同様の積層断面が得られた。 積層インプリント法において、積層界面形状は積層構造の性能を左右する重要な要素であるが、積層体を一度にプレス加工するという性質上、積層材量の流動挙動など、材料の性質によって決定されるため、狙い通りの形状を得ることが困難であった。この積層インプリント法のシミュレーションを行うことにより、積層界面形状の予測が容易になり、界面形状のコントロールを行いやすくなると考えられる。 また、積層インプリント法の応用として、生体機能表面の模倣にも取り組んだ。一般のインプリント加工において、モールドから成形体を取り外す工程が必要なため、パターン形状に制約があった。本研究ではより自由なパターン形状を得るために、一度作製されたパターン上に保護層を付与し、保護層の上から再度加工を行うことで、オーバーハング形状やアスペクト比3以上の高アスペクトパターンの作製を目指した。これに加え、加工後に横方向への圧縮を加えることで、パターンのアスペクト比を約2倍にすることに成功した。保護層を用いた積層インプリントにより、パターンの複雑化が可能になると考えられる。
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