2年目では肥満や痩身、加齢といった個体の生理状態がエクソソームmiRNA発現に及ぼす影響について検討した。異なる飼養条件によって得られた肥満や痩身のような異なる生理状態のウシおよびマウスから血液を採取し、キットを用いてエクソソームを回収した。得られたエクソソームからRNAを抽出し、エクソソーム内miRNAの発現プロファイルを明らかにするため次世代シーケンサーを用いたsmall RNA-seqを行なった。 small RNA-seqの解析から、異なる生理状態によって発現が変化するmiRNA群を同定した。また、若齢および高齢個体から卵胞液または血液をウシまたはマウスから採取し、同様にsmall RNA-seqによりエクソソームmiRNAの発現解析を行い、加齢によって発現が変化するmiRNA群を同定した。これらの結果は飼養環境(穀物食と牧草食)、加齢等の生理状態が卵子や胚の発育環境を含めた生体内の細胞外核酸発現プロファイルを変化させていることを示すものである。 さらに、卵胞液中に存在する細胞外DNAについて詳細な解析を行った。卵胞液からDNAを抽出し次世代シーケンサーを用いたDNA-seqにより配列を同定した。抽出したDNAのサイズについて、卵胞液中には様々なサイズのDNAが存在していることが明らかになった。アライメントの結果、核ゲノムに比べてミトコンドリアゲノムでcoverage depthが大きい結果となった。また、ミトコンドリアゲノムへのマッピングに偏りが見られたことから、分泌されている細胞外DNAに選択性がある可能性が示唆された。
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