本研究は、非標準的な葉序であるコクサギ型葉序(180°、90°、180°、270°の開度周期を有する葉序)・コスツス型葉序(開度が60°を下回るような螺旋葉序)の成因の解明を通して、標準葉序だけを対象にしていたのでは見えてこなかった植物側生器官位置決定機構の新たな枠組みを描こうとするものである。本研究ではコクサギ(ムクロジ目ミカン科)およびコスツス(ショウガ目コスツス科)を研究材料として用いている。 本年度(令和元年度)は、コクサギ型葉序、コスツス型葉序の生成機構を数理モデルを用いて明らかにするため、次を行った。 まず、茎頂を模した放物面の上でオーキシン極性輸送再編モデルのコンピュータシミュレーションを行い、コクサギ型葉序様のパターンの生成に成功した。これにより、コクサギ型葉序の生成に重要な要素についていくつかの知見が得られた。また、コクサギのPIN1ホモログのリコンビナントタンパク質を作出し、上記のモデルの予測の検証となる、免疫染色の足掛かりを得た。 コスツス型葉序については、この葉序の生成を説明できる新たな数理モデルを構築し、このモデルを理論的に、また計算機的に解析したところ、従来説明することのできなかった、コスツス科植物の実生に見られる葉序の初期の遷移過程についても、非常によく再現できることが新たに分かった。また、この数理モデルをパラメータ網羅的にシミュレートしたところ、これまでに記載された葉序のほとんどが生成された。
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