研究課題
本研究では、近藤が開発した「低電圧駆動かつ大面積成膜プロセスにも適合するフレキシブル有機トランジスタ」(Applied Physics Express 2016) を応用することで世界初のフレキシブル無線磁気計測システムを実現する。集積された磁気センサは位置制御や記録媒体に使用されており、さらには人の磁気を可視化することで高精度な病気診断までできるようになると言われている。フレキシブル磁気センサは、設置場所の形状によらず使用することができるため、さらにその応用範囲を拡張できる。しかし、これまで報告されてきたフレキシブル磁気センサは集積化に必要な回路化がなされていなかった。また磁気センサ素子の感度もミリテスラレベルで決して高感度な素子ではなかった。本研究では、フレキシブル磁気センサ回路の社会実装を実現するための基盤技術開発として、フレキシブル磁気センサ素子の集積回路化、高感度化、無線システム化を目的としている。本年度は、フレキシブル無線磁気計測システムの基本となる、柔軟磁気センサマトリクス、柔軟有機信号増幅回路、有機マトリクスドライバ回路および定電流回路の構成要素についてシミュレーションを行い、現状の有機トランジスタ作製プロセスでの特性最適化に取り組んだ。これにより従来で報告されていた柔軟な単一磁気センサ素子から、世界初の柔軟な磁気センサ回路化を目指した。開発した有機トランジスタプロセスを用いることで、全ての構成回路が小型バッテリー程度の電圧で駆動可能な回路を設計した。さらにそれぞれの回路で動作検証しただけでなく、ポリマー基板上に集積した柔軟磁気センサマトリクスと同一平面上に開発した信号増幅器、マトリクスドライバ回路、定電流回路を実装した世界初のフレキシブル磁気センサマトリクス回路を実現することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、研究開発はおおむね順調に推移している。フレキシブル磁気センサシステムの基本的な構成は構想通り実現することができている。今後、さらにセンサ回路全体の高感度化に取り組んでいく。
研究の今後の方策としては、今年度設計した信号増幅回路のさらなる高性能化に取り組んでいく。
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