研究実績の概要 |
物質の磁気特性や誘電特性を光などの外部刺激によって制御することは化学や物理などの様々な分野で精力的に研究が行われている。本研究は、光により誘電特性と磁気特性の両方を制御することを目的としている。今年度の研究においては、分極構造を有する磁性体の合成を目的として新規錯体の合成を行い、2種類のシアノ架橋型錯体の合成を行なった。1つは光応答性の部位となりうるニトロシル基を有するペンタシアノニトロシルモリブデン酸イオンとランタノイドイオンを組み合わせたシアノ架橋型錯体[Ln(dmf)6][Mo(CN)5(NO)] (Ln = Ce, Pr, Nd, Sm, Tb, Dy, Ho, Er, dmf = N,N-ジメチルホルムアミド)を合成し、物性の評価を行った。単結晶構造解析によってこれらの化合物はすべて中心対称性を持たない分極構造を有することが明らかになった。一連の化合物において第二高調波発生の観測を行い、光測定によってもこれらの化合物が中心対称性を持たない構造であることを示した。 2つめは、オクタシアノタングステン酸イオンとマンガン三核錯体が交互につながった珍しい構造を有するシアノ架橋型錯体を合成し、物性の評価を行った。磁気特性を調べることにより、マンガン-マンガン間及びマンガン-タングステン間の2種類の反強磁性的な相互作用の存在を分子磁場理論により示し、この錯体が磁気相転移温度が20 Kのフェリ磁性体であることを明らかにした。
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