研究課題/領域番号 |
18J12460
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飛田 一樹 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 金属物性 / 構造・機能材料 / 熱電変換材料 / 高圧合成 / 第一原理フォノン計算 |
研究実績の概要 |
本年度は主に、Fe-Al二元系化合物に焦点を当て、正方晶FeAl2の合成条件(温度、圧力)の最適化を行った。その結果、物性測定に適した高さ5 mm程度の円筒状単相試料が7.5 GPa, 873 Kで3時間加熱することによって作製できることを見出した。従来作製した試料はダイアモンドアンビルセルやマルチアンビルセルの二段押し20 GPaが必要だったことを考慮すると、今後組成の最適化を行う上でプロセスの大幅な簡略化が期待できる。 前述の単相試料を用いて、ゼーベック係数、電気伝導率、ホール係数、熱伝導率の測定を行った。正方晶FeAl2は先行研究からフェルミ準位近傍に挟ギャップを持ち高いゼーベック係数を持つことが期待されていたが、物性測定により-100 μV/K程度の高いゼーベック係数を持つことを明らかにした。ゼーベック係数の温度依存性は低温ではn型、高温ではp型であったことから、今後化学ドーピングによってさらにゼーベック係数の改善が見込まれる。 実験で最適化した温度圧力条件について考察するために、第一原理フォノン計算を用いて正方晶FeAl2と競合相のギブス自由エネルギーを準調和近似の範囲内で計算した。その結果、正方晶FeAl2は競合相と比較すると一原子当たりの体積が小さいため高圧下で安定化し、振動エントロピー項の寄与が小さいため高温下で不安定化することが推察された。この傾向は実験で温度圧力を振った場合の生成相の傾向と一致した。次年度は第一原理計算を援用し更なる新規高圧相探索を探索するとともに、化学ドーピングによる正方晶FeAl2の熱電特性最適化を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で着目する材料の一つであるFe-Al二元系化合物において、正方晶FeAl2の合成に最適な温度圧力条件について実験と計算の両面から考察し、また、その物性を明らかにしつつある。マルチアンビルプレスで圧力温度条件を振ることにより、初めて単相かつ物性測定に十分な大きさの試料を作製することができた。単相試料の物性測定により、初めて第一原理計算と照らし合わせて熱電物性について議論することができる。以上の研究成果から、当初研究計画と照らし合わせて「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、以下の内容に着目しプロジェクトを遂行する。 (i)正方晶FeAl2 熱電物性の最適化のために、化学ドーピングやボールミリングを行う。併せて最適な合成条件の出発相依存性について検討し、熱力学的な観点から正方晶FeAl2の安定性について考察を行い、より低圧力での合成を目指す。 (ii)新規高圧半導体相 従来から指摘されていた、生成エンタルピーの観点からは安定だが実験では作製できない化合物群について、温度圧力を振ってギブス自由エネルギーを求め、実験的に作製するために有利な温度圧力条件を検討する。
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