前年度までに中心体アペンデージ構造subdistal appendage (SAP)の構築因子であるCep128に着目して、細胞周期進行におけるSAPの機能解析を進めてきた。気管上皮多繊毛細胞などの動的繊毛の基底小体Basal body (BB)には、SAPと構築機序が類似すると考えられているBasal foot (BF)が付属している。そこで本年度は、構造的、機能的に分化した多繊毛上皮細胞に着目し、繊毛動態や組織の機能構築におけるBFの役割を解析することにより、アペンデージ構造が担う生体恒常性の維持システムを包括的に理解することを目的とした。申請者の所属研究室ではこれまでに、BBのマーカー分子であるCentrinにGFPを融合したトランスジェニックマウスを作製していたが、本年度ではさらに、BFのマーカーとしてCep128を蛍光標識したダブルトランスジェニックマウスを新たに確立し、解析を行った。 BB、BFそれぞれを蛍光標識したことで、BBの配置を示す情報に加え、経時的なBB-BFの方向性の遷移を示す情報をライブイメージングにより取得することが可能になった。ダブルトランスジェニックマウスから構築したマウス気管繊毛上皮細胞の初代培養システムMTECでの解析の結果、気管上皮多繊毛細胞の成熟過程に伴い、BB-BFの方向性が乱れた段階から細胞内の方向性が揃って統一されていく過程を確認することができた。さらに、細胞骨格が発達し、細胞骨格による拘束性がより高いと考えられる成熟後期ステージにおいて、BB-BFの振動が小さくなることが明らかとなり、BB-BFの方向性の遷移が細胞骨格構築と連動していることが示唆された。
|