研究課題/領域番号 |
18J12483
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
島田 龍輝 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | SMAD4標的遺伝子 / メス分化 / キメラ解析 / Stra8 |
研究実績の概要 |
メス分化におけるBMP-SMAD4の機能を解析するために、single cell-RNA-Seq(scRNA-Seq)を用いて、BMP-SMAD4シグナルが活性化しする時期について検討した。その結果、メス分化に関与しているもう1つのシグナルであるRA-STRA8が活性化する前の生殖細胞でBMP-SMAD4シグナルが活性化していることが確認できた。このことはBMP-SMAD4シグナルがメス分化のトリガーであるという考えを支持する。 SMAD4の標的細胞を同定するため、1. Smad4-KOにおける発現変動遺伝子、2. メス生殖細胞で発現が高い遺伝子、3. ChIP-SeqのデータベースであるChIP-Atlasから得たSMAD4の推定標的遺伝子のリストを比較し、1~3全てのリストに含まれる遺伝子22個を同定した。これらの遺伝子はBMP-SMAD4によってメス生殖細胞で発現が誘導されている遺伝子と予想される。これらの遺伝子が生殖細胞で実際にBMP-SMAD4によって制御されているかはChIP-qPCRなどを行い確認する。 同定した22個の遺伝子がメス分化を制御するか解析するため、キメラ解析の系を利用してStra8との多重KOでオス分化マーカーであるNANOS2の発現を解析することを目指す。キメラ解析のために、申請者はES細胞を用いてStra8-KO細胞を作成し、多重KOを可能な環境を整えた。このStra8-KO ES細胞やWT細胞を用いて候補遺伝子のKOを作成し、表現型解析を行っている。候補遺伝子の中にはいくつかのファミリー遺伝子が含まれており、機能が重複していることも予想されるが、キメラ解析系は多重KOを簡便に行うことができる系であることから、メス分化が複数の遺伝子によって制御されている場合でも、責任遺伝子を解明することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、生殖細胞内でのSMAD4の標的遺伝子をChIP-Seqを行い、Globalに行うため、生殖細胞で特異的にTag付SMAD4を発現するマウスを作成し、実験を行う予定であったが、発現が生殖細胞で適切に誘導する事が出来なかった。そこでChIP-Seqの公共データベースであるChIP-Atlasを用いる事で、SMAD4の推定標的遺伝子を同定した。今後これらが実際にSMAD4の標的であるかを、ChIP-qPCRなどを行い、確認する必要がある。 生殖細胞のメス化制御候補遺伝子の絞り込みは、ほぼ終了しているため、予定通り、キメラ解析の系を用いて、候補遺伝子について機能解析を行い、責任遺伝子の同定を行う。
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今後の研究の推進方策 |
想定したSMAD4の標的候補遺伝子について、実際にメス分化課程に置いてSMAD4によって直接制御されているのかを確かめるため、SMAD4に対するChIP-qPCR等を行う事で、直接の標的遺伝子をさらに絞り込む。 同定された候補遺伝子について、その発現パターンやKO表現系の解析から、メス化遺伝子の同定とメス化制御機構の解明を目指す。候補遺伝子には、単純KOで胎生致死を示す遺伝子が含まれているため、キメラ解析の系を利用して表現系の解析を行う。メス分化を制御する遺伝子をKOすると、生殖細胞がメス生殖巣であってもオス分化すると予想される。オス分化の指標として、オス分化制御因子として知られるNANOS2の発現を確認する。KOによってNANOS2の発現を誘導できた遺伝子がメス分化制御を担うと予想されるため、機能解析を行うことで生殖細胞メス分化機構の解明を目指す。 機能が重複すると考えられる遺伝子群については、多重KOによる表現系解析も並行して行う。
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