研究課題/領域番号 |
18J12545
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
細田 祥勝 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 眼科 / 中心性漿液性脈絡網膜症 / 近視 |
研究実績の概要 |
研究者らは前年度に近視性黄斑症に関連する遺伝子として、CCDC102Bを報告している。(Nat Commun. 2018 May 3;9(1):1782.)さらに今年度は国際研究グループであるCREAM(Consortium for Refractive Error and Myopia)とメタ解析を行った。既報の50以上の近視関連遺伝子について検討を行い、近視関連遺伝子としてもよく知られているKCNMA1とGJD2が、近視発症のみならず近視性黄斑症の発症にも寄与していることを特定した。この結果はアジア人のみならず、白人でも再現性を確認した。以上の結果について、現在英文雑誌に投稿中である。 上記と並行して、眼底を定量的に評価することにより、眼疾患関連遺伝子の特定を試みた。眼には網膜と強膜の間に脈絡膜という血流豊富な組織が存在する。脈絡膜は眼の循環をつかさどっており、主要な失明原因である加齢黄斑変性や中心性漿液性脈絡網膜症の発症において、非常に重要であることが分かってきている。特に中心性漿液性脈絡網膜症は脈絡膜の肥厚を特徴とし、近年失明原因として注目されてきている。 今回研究者らは世界で初めて脈絡膜厚に関連する遺伝子として、CFHとVIPR2の2つの遺伝子を特定した。さらにその2つの遺伝子における、脈絡膜を肥厚させる遺伝子変異が、中心性漿液性脈絡網膜症の発症に寄与していることを明らかにした。この関連性は日本人のみならず、韓国人においても再現性が確認された。これらの結果については、本年度に英文誌に掲載された。(Proc Natl Acad Sci U S A. 2018 Jun 12;115(24):6261-6266)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近視性黄斑症関連遺伝子として新規遺伝子を特定し、さらに当初の目的通りに、眼底の定量的な評価により、中心性漿液性脈絡網膜症感受性遺伝子も特定できた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は下記に記すさらに新たな手法を用いて、他の眼他因子疾患の関連遺伝子解明を試みる。 これまで定量的な指標を用いて、正常人をもちいてGWASを行い眼表現系に関連する遺伝子を特定し、さらにその候補遺伝子と疾患との関連を検討する試みは数多くなされてきた。この試みは、疾患のサンプル数が数多く集めることが困難なため有用であり、今年度研究者らも脈絡膜に関連する遺伝子を特定した。しかしながら正常人のGWASでは候補遺伝子が多数になるため、検定の多重性を考慮すると、次の疾患との関連を検討する段階において、偽陰性が多くなってしまうことが問題点である。 そこで本年度は、数多くの候補遺伝子から、さらに重要な遺伝子を絞り込むための手法として、IBM Watsonを用いることとする。Watsonは問題を認識して、その解答として正しいもの、正しそうなものを推測し、提示すると言う役割を担う目的で開発された第三世代の「コグニティブ・コンピューティング・システム」である。ありとあらゆる自然科学系の出版物を読むことにより、それらの間に未知の関係性を発見することができる。活用例として、ベイラー医科大学のがん研究者はp53の活性化を導くキナーゼを予測するため、p53に関する7万もの科学論文をWatsonを用いて分析し、既知のp53キナーゼの近隣に位置するキナーゼを、新たな研究対象となり得るp53に作用するキナーゼとして特定した。別の事例として、筋萎縮性側索硬化症に関係するRNA結合タンパク質の同定にもwatsonを用いたという報告がされている。 次年度は、上記のWatsonを我々のGWASデータと組み合わせることにより、さらなる眼多因子疾患関連遺伝子の特定を試みる。
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