研究課題
Vector Boson Scattering (VBS)断面積のボソン対衝突エネルギー(Ecm)依存性は、電弱対称性の破れの機構によって顕著に変化する。特に直接探索で到達不可能な重い新粒子も、t-channelで散乱断面積に顕著な影響を示すことがある。そのとき、断面積の標準模型からの逸脱が最も顕著なのは、高いエネルギーの散乱事象である。ATLAS実験ではボソン対が全てレプトン崩壊する解析でVBSを既に発見している。本研究では、ATLAS実験に参加し、より高い散乱エネルギーの事象を得るため、片方のボソンがハドロニック崩壊する過程を用いてVBS事象を観測する。このとき、全てレプトン崩壊する解析に比べ、要求するレプトンの数が少なくなるために背景事象が多くなるため、その削減が重要になる。平成30年度は、シミュレーションを用いた物理模型の検証や、解析の構築、系統誤差の評価を一貫しておこなった。特に重要な背景事象を削減に関する研究として、大半径ジェットを用いた新しいボソンタグの開発をおこなった。大半径ジェットとは、ハドロン崩壊したボソンがローレンツブーストした場合、2つのクォーク由来のジェットが重なった場合に、それを大きな半径のジェットで再構成する手法である。ボソンタグはその大半径ジェット内のハドロンのエネルギー分布等を用いて、それを背景事象由来か信号事象由来かを区別する手法である。そのボソンタグ手法を13TeVの重心系エネルギーの衝突の条件下で最適化し、大半径ジェットのエネルギーの較正をおこなった。それらの研究結果は、2つの論文、EPJC (2019) 79: 135、arXiv:1808.07858で公開されている。現在、開発したボソンタグ手法を活用したVBS散乱断面積の測定結果をまとめる最終段階に至っており、平成31年度中に論文を科学誌に投稿するための準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
計画では本段階で、解析設計を完了する予定であったが、概ねそのとおりに進んでいる。
論文投稿のため、最終的な結果の調整をおこなう。調整が整い次第、学術論文を出版する。また、ATLAS実験が13TeVの重心系エネルギーの運転で得た全ての実験データを用いた解析が始まっているため、これまでの経験を活かし、解析の基礎設計や、今までの解析に組み込むことを見送った改善点を次世代の主解析者に伝える。また、今までの解析結果を博士論文としてまとめる。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
The European Physical Journal C
巻: 79 ページ: -
https://doi.org/10.1140/epjc/s10052-019-6632-8
Journal of Physics: Conference Series
巻: 1085 ページ: 042012~042012
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Proceedings of Science
巻: PoS(DIS2018) ページ: -
https://arxiv.org/abs/1808.07858