研究課題/領域番号 |
18J12599
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
新海 晃 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 聴覚障害児 / 文章産出過程 / 作文 / 説明文 / 論証文 / 評価 / 言語要素 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、文章産出過程モデルに基づき、文章産出に係る外的要因(例:文種、読み手の違い)と個人要因(書き手の知識・能力)の2つの観点から、聴覚障害児の文章力の発達的特徴および文章産出上の困難に関与する要因を明らかにし、文章力の向上のために有効な教育的指導・支援方法について検討することである。 今年度は、以下に示す、外的要因に関する2つの検討を行った。 (1)聾学校中学部及び高等部の聴覚障害児が書いた説明文219編について、印象評定による作文評価の特徴と、多数の言語要素の使用傾向と作文評価との関連について検討した。作文課題は、カレーライスの作り方の説明とドッジボールの遊び方の説明であった。分析の結果、説明文の総合評価には、説明内容の独創性や適切さ、統語的正しさが強く関連することが示された。また言語要素の使用傾向の分析から、語彙力や表現力に課題の少ない場合でも文種に応じた構造の作文を書くことに困難があること、言語要素の使用傾向では評価の高低を十分説明できないことが示唆された。 (2)聾学校中学部及び高等部の聴覚障害児が書いた論証的文章112編について、印象評定による作文評価の特徴と、多数の言語要素の使用傾向と作文評価との関連について検討した。作文課題は、意見文と読み手を説得する2種の説得文の計3種であった。分析の結果、論証的文章の総合評価には記述の客観性や正当性、一貫性が強く関連することが示された。一方、読み手が納得するような作文を書くことに困難があり、読み手意識に課題があることが示唆された。また、言語要素の使用傾向の分析から、学部間で共通した文章構造が用いられること、説明文と同様に言語要素の使用傾向では評価の高低を十分説明できないことが示唆された。 これらの研究成果については学会発表及び学術雑誌への投稿を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、文章産出に係る外的要因の観点から2つの分析・検討を行い、重要な知見を得ることができた。 また個人要因の要因の検討に際して、課題を作成するとともに調査対象校への事前相談を行うなど、次年度に向けて研究を進めている。したがって、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度収集したデータをさらに詳細に分析するとともに、個人要因の観点からの検討を行う。そして、それらの結果に基づき、聴覚障害児の文章力の向上のための教育的指導・支援方法について考察していく。
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