研究課題/領域番号 |
18J12653
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
市場 友宏 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | イオン拡散 / 無鉛ハンダ / 密度汎関数法 / 数理モデリング |
研究実績の概要 |
本研究は「無鉛ハンダ界面のε-Cu3Sn相への不純物添加物種と添加量の選定が界面での割れ (ボイド発生) 抑制に対してどのように影響するかを第一原理計算から調べ、最適な組合せを明らかにする」ことを目的にしたものである。界面でのボイド発生はCuイオンとSnイオンの拡散速度の差によるものと考えられている。そこで、採用前から採用初年度に掛けて「欠陥形成頻度」や「空孔拡散のサイト間の飛び移り頻度」といった、第一原理計算による予見方法の確立している物理量を拡散係数評価に結びつける数理モデルを確立し、まずは「純粋なε-Cu3Sn相中でのCu/Snイオン拡散係数の第一原理予見を確立する」ことに傾注して取り組んできた。これまでにCuイオンについて拡散係数を与える数理モデルを確立している。実現しうる空孔欠陥の移動軌跡が無数に存在することが、数理モデルの構築を難しくしていたが、「ドメイン分割」や「サイト粗視化」といった報告者独自のアイデアを導入することによって、拡散ネットワークを大幅に簡素化し、空孔移動軌跡を解析的に網羅することを実現した。初年度には当該成果について原著論文の執筆、論文投稿を進め英国化学会誌の「Phys. Chem. Chem. Phys.」に採録されるに至っている。また、当該成果を周知するために米国材料科学会主催「2019 MRS Fall Meeting」と米国物理学会主催「APS March Meeting 2019」でそれぞれ口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度には、主に「甲/Cuイオン拡散係数数理モデルを原著論文として発表する事」と「乙/Snイオンの拡散係数数理モデルの確立」を目標としてプロジェクトを推進し、甲については概要で述べた通り達成するに至っている。一方、乙に関して、Snイオン拡散係数の数理モデリングは、これまでに確立した「サイト粗視化」を適用出来ない難問であることが判り、モデル構築には至らなかった。したがって、現在は数値計算を用いた拡散係数評価に切り替えて研究を進めており、それによりSnイオン拡散係数の第一原理評計算による評価手段を確保出来るものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Snイオン拡散係数の数理モデリングにおける難点は、「サイト粗視化」の適用し拡散ネットワークを簡素化することが出来ず、したがって、空孔移動軌跡の解析的な網羅が出来ないことである。これに対して、数値計算による方策では、各拡散経路のホッピング確率に従って空孔をランダムウォークさせ、空孔移動軌跡を相当数サンプルすることで、数理モデルを使用した場合と比べて解析に計算コストを要するが、実現確率の高い経路を同定し、拡散係数評価に結び付けられると考えている。
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