研究実績の概要 |
両側にジャンプを持つ Levy 過程に対する配当問題についていくつかの進展があった. Jose-Luis Perez 氏(CIMAT), 山崎和俊氏(関西大学)および矢野孝次氏(京都大学)とともに, 指数分布のジャンプを持つ Levy 過程に対する Poisson 的配当の研究を行い, いくつかの結果を得た. 単独で, 両側にジャンプを持つ一般の Levy 過程に対する, 資本注入を含んだ最適配当問題についても研究を行い, いくつかの結果を得た. この結果については論文を準備中である. 正のジャンプを持たない Markov 加法過程に関する研究についてもいくつかの進展があった. 8 月から9 月にかけてメキシコの CIMAT に滞在し, Jose-Luis Perez 氏(CIMAT)およびJuan-Carlos Pardo 氏(CIMAT)とともに, 正のジャンプを持たない Markov 加法過程の周遊測度の性質とその応用に関する研究を行った. この際 Victor Rivero 氏(CIMAT)とも周遊理論に関する議論を行い, Markov 加法過程の周遊理論に関する多くの知識を得ることができた.また, Jose-Luis Perez 氏および Xiang Yu 氏(Hong Kong Polytechnic University)とともに, 正のジャンプを持たない Markov 加法過程に対する最適配当問題の研究を行った. この結果については論文にまとめ, 現在投稿中である. 矢野孝次氏および Victor Rivero 氏とともに, Markov 過程の不変測度への収束の速さに関する研究も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
技術的に困難ががあるとされてきた, 両側にジャンプを持つ Levy 過程に関する最適配当問題に対して, 経路解析による新しい方法を用いることにより反射--反射戦略の最適性を証明できた. これは既存の, 片側にジャンプを持つ Levy 過程に関する最適配当問題の結果も包括する, 非常に興味深い結果であった. また, 指数分布のジャンプを持つ Levy 過程に対する Poisson 的配当について研究することで, 計算結果だけではなく, 指数分布のジャンプを持つ Levy 過程の周遊測度に関する性質もいくつか得ることができた. Markov 加法過程に関しては今後の研究に非常に有用だと期待される, 周遊測度とスケール行列の興味深い等式を得ることができた. また一般の正のジャンプを持たない Markov 加法過程に関する最適配当問題は, 研究開始時点で先行研究が確認できなかったが, 関数の反復合成とその収束性を利用することにより, 屈折戦略の最適性の証明に成功した. Markov 過程の不変測度への収束の速さの評価に関しては,Markov 過程の抽象さがゆえに困難に思われたが, 周遊測度と局所時間の理論を利用することにより, 問題を非常に具体的な形に落とし込むことができた.
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今後の研究の推進方策 |
両側にジャンプを持つ Levy 過程に関する最適配当問題の研究を大幅に進展させたいと考えている. 特に, 屈折--反射戦略の最適性, 完全単調な Levy 密度を持つ場合における屈折戦略の最適性を行いたい. そのためには経路解析の技術の発展や, 指数分布のジャンプを持つ Levy 過程による近似の方法の発展が必要だと予測される. また, Markov 加法過程に関するパリジャン破産の研究を行いたい. このためには, 集合に関する周遊測度の性質をより深く研究する必要がある. 近年盛んにおこなわれている, Markov 加法過程の Wiener--Hopf 分解が役に立つのではないかと予測される. Markov 過程の不変測度への収束の速さの評価に関しては緩変動の理論を用いることにより, 研究を先に進めていきたい.
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