研究課題
本研究では、核融合炉におけるデタッチメント状態維持に向け、新しいプラズマ流体数値計算手法としてラグランジュ―モンテカルロ法の開発を行ってきた。本手法は、対流現象に特化したラグランジュ法(以下、LG法)、拡散現象に特化したモンテカルロ法(以下、MC法)とを組み合わせ、仮想流体粒子の輸送によりプラズマ輸送方程式群を解く手法である。中性粒子との衝突による効果はプラズマ流体方程式における生成項あるいは損失項として取り込まれるが、本年度前期には簡単な中性粒子モデルを用いて、LG法、ラグランジュ―モンテカルロ法それぞれの妥当性検証を行った。後期にはより現実的な中性粒子モデルやパラメータを用い、従来の有限体積法を用いたコードとの詳細な比較計算を行った。以下に成果の概要を述べる。1)初期のLG法ではプラズマの速度、温度を直接計算していたが、MC法とのカップリングのため、運動量密度、エネルギー密度の計算に変更した。解析解との比較により新しいLG法の妥当性を確認した。2)MC法における境界条件について、フィードバックが不要な直接的な方法に変更した。MC法において非常に困難な点であった、拡散フラックスを境界条件として与える方法を確立できたといえる。3)簡単な中性粒子モデルを用いて、LG法、ラグランジュ―モンテカルロ法、有限体積法の三手法の比較計算を行い、三手法は概ね良い一致を示した。これにより、LG法、ラグランジュ―モンテカルロ法の基本的妥当性を確認した。4)より現実的な中性粒子モデルやパラメータを用い、LG法、有限体積法の比較計算を行った。非線形性の強い粒子生成や運動量損失の計算を取り込むと、両方法の結果にずれが生じた。その原因を、二つの手法の生成項の取り扱いの相違から明らかにした。
3: やや遅れている
本研究で行っているラグランジュ―モンテカルロ法の開発において、従来用いられている有限体積法との比較計算を行うことは、手法の妥当性を確認する上で非常に重要である。しかしながら、様々な物理量が複雑に絡み合い、さらに境界付近で急峻な勾配をもつ核融合境界層プラズマの計算にこれらの手法を適用した際、二つの手法の結果を完全に一致させることは非常に困難であった。その原因解明に予定よりも多くの時間を要したことが、進捗がやや遅れている原因である。
有限体積法とLG法の間の根本的な差異を明らかにすることができたため、今後はその比較計算に多くの時間を費やす必要はなく、LG法・ラグランジュ―モンテカルロ法の多次元化に集中して取り組む。LG法・ラグランジュ―モンテカルロ法の多次元化には原理的な難しさはない。しかし、計算領域やテスト粒子数を増やす必要があることから、計算コストの削減が必須課題となる。そのためには複数の計算機を並列して使うため、計算コードの並列化が必要となる。早い段階で計算コードの並列化を行い、本研究を効率的に推進していく所存である。
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