本研究は、希土類添加オキシナイトライド結晶化ガラス蛍光体を作製し、完全無機材料で構成される白色照明デバイスへの応用の可能性を示すことである。具体的には、405 nmレーザーダイオード(LD)を光源とした、白色LD照明デバイスの蛍光体プレートとして、Eu2+添加Ba-Si-O-N結晶化ガラス蛍光体を作製した。同カチオン組成比の酸化物結晶化ガラス蛍光体も作製し、オキシナイトライド結晶化ガラスのSi四面体の配位環境および発光特性の調査および酸化物結晶化ガラスとの比較を行った。 ガラス中でEuを2価で存在させるために、ガラス炉内を還元雰囲気で満たし、高温で溶融した後、不活性ガス雰囲気に置換し取り出し、大気で溶融急冷によりガラスを作製した。得られたガラスを還元雰囲気で熱処理を行い、結晶化ガラスを作製した。 ガラス中のSi四面体のアニオンの配位環境について調査するためNMR測定を行った。得られたスペクトルの解析結果から、オキシナイトライドガラス試料において[SiO4]ユニットの他に、[SiO3N]ユニットが形成されていることが明らかになった。 発光特性評価について405 nm LDを励起光源とした発光スペクトルを測定した。オキシナイトライド結晶化ガラス試料の発光バンドのピーク波長は565 nmと酸化物結晶化ガラス試料のピーク波長523 nm と比べ、約40 nm長波長側にシフトした。これは、部分窒化による結晶場強度の変化、結晶相と残存しているガラス相との発光によるものだと考えられた。LDと結晶化ガラス蛍光体を組み合わせた発光色は、酸化物試料の淡黄色から部分窒化により橙色へシフトした。 以上のように、青色LD用希土類添加オキシナイトライド結晶化ガラス蛍光体を作製し、発光波長の長波長化に成功し、白色LD照明デバイスへの応用の可能性を示した。
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