研究課題/領域番号 |
18J12698
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 秀政 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
|
キーワード | 陸上植物 / 苔類ゼニゴケ / 植物ホルモン / オーキシン / 発生 / 幹細胞 / メリステム / 器官形成 |
研究実績の概要 |
陸上植物は、幹細胞領域(メリステム)を基点として三次元的な体制を築きつつ成長する。本研究では、陸上植物進化の基部に位置する苔類ゼニゴケをモデルとして、メリステム形成機構を遺伝子発現制御の観点から解明することを目的とする。平成30年度は、① 植物ホルモン『オーキシン』による遺伝子発現制御について解析を進めるとともに、② 無性繁殖体(無性芽)形成においてもオーキシン信号伝達が重要となることを見出した。また、研究成果を国内外の学会において発表した。研究内容について以下に詳述する。
① オーキシンは、受容体タンパク質TIR1/AFBに結合すると転写抑制因子AUX/IAAの分解を促し、転写因子ARFによる遺伝子発現制御を亢進する。これまでの研究で、ゼニゴケに唯一のオーキシン受容体ホモログMpTIR1の機能欠損植物を作出し、適切なメリステムが形成されず細胞塊状となることを見出していた。30年度は、Mptir1機能欠損株と正常なゼニゴケ組織のトランスクリプトームデータを比較し、Mptir1機能欠損株の遺伝子発現プロファイルが発生初期の胞子発芽体と成熟した組織の中間的状態にあることを解明した。
② ゼニゴケの無性繁殖体(無性芽)形成過程で細胞系譜を可視化する手法を確立し、無性芽形成パターンとメリステムの細胞系譜を解明した。同様の手法を、MpTIR1を誘導的にノックアウトできる植物に応用し、MpTIR1を介したオーキシン信号伝達は発生初期だけでなく無性芽形成過程でのパターン確立やメリステム獲得をも制御していることを解明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたトランスクリプトームデータの解析はやや遅れているものの、着実に進行している。一方、当初予定になかった無性芽の細胞系譜可視化系を確立できたことで、メリステム形成に関する新たな知見を得られている。よって、今後の研究方策に若干の修正を要するものの、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
以下の二点について研究を進める。 ① トランスクリプトームデータ解析によりメリステム形成の鍵因子を探索し、生理機能を実験的に検証する。現在、Mptir1機能欠損株を含め、正常なメリステム形成が損なわれた複数の細胞塊状変異体のトランスクリプトームデータを取得している。これらの変異体で共通して発現異常を示す遺伝子からメリステム形成の鍵因子を推定する。推定された候補遺伝子について、機能欠損植物・過剰発現植物等を作出して表現型解析し、メリステム形成における機能を明らかにする。 ② 無性芽形成過程をモデルとして、発生パターン確立とメリステム獲得におけるオーキシン信号伝達の役割を検証する。オーキシン処理やオーキシン信号伝達の実行因子(MpARF1)を機能欠損させた状態で無性芽細胞系譜可視化実験を行い、表現型解析を行う。なお、当該システムでのMparf1機能欠損株は既に作出されている。
|