研究課題/領域番号 |
18J12706
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
福井 誠 近畿大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 光触媒 / 可視光 / 酸化チタン / 有機基修飾 / アルキン / 部分水素化反応 / 溶媒効果 / 温度依存性 |
研究実績の概要 |
本研究では、可視光応答型有機基修飾酸化チタン光触媒における酸化・還元(レドックス)反応場の効率的な電荷分離を目的としており、2種類の異種半導体と有機鎖によって構成されるサンドイッチ型ハイブリッド光触媒を合成し、可視光光触媒反応へ応用する。 【具体的内容】本研究課題の重要なキーワードである効率的な電荷分離を目指し、有機基修飾酸化チタン光触媒の表面上へ金属助触媒として銅を導入し、可視光照射下におけるアルキンからアルケンへの部分水素化反応を検討した。その結果、アルキンからcis型アルケンへ選択的に水素化され、逐次水素化物であるアルカンまで水素化されないことが明らかとなった。 また、アセトニトリル溶媒への水の添加効果や反応温度の影響について検討したところ、少量の水を添加することにより、触媒表面への基質の吸着量が増加し反応速度が上昇することや、反応温度をコントロールすることで生成物(アルケンおよび水素)への選択性を制御できることが明らかとなった。 これらの研究成果を第37触媒化学シンポジウムや国際学会であるThe 8th Tokyo Conference on Advanced Catalytic Science and Technologyにおいて発表した。また、論文としてJournal of Catalysis に投稿し、現在査読中である。 【意義・重要性】以上の結果より、可視光駆動型有機基修飾飾酸化チタン光触媒において、化学工業的に重要なアルキンの選択的な水素化反応が進行することが明らかとなり、また、溶媒効果の原因や温度依存性による反応制御などの知見は、他の触媒反応系においても活用可能であると考えられる。これらの結果・知見により、本研究課題にとって重要な可視光光触媒反応の研究における反応設計の指針が提供され、触媒機能の可能性が広がったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レドックス分離をめざす異種半導体-有機鎖サンドイッチ構造の構築と可視光光触媒反応のために、まず、半導体-有機鎖構造の構築と適用する反応系の探索を行った。その中で、ナフタレン環構造が半導体の伝導帯への可視光電子注入に効果的であること、および、適切な助触媒を使用することで半導体の伝導帯から目的物質への電子注入(水素化)が極めて選択的に行えることを見いだした。具体的には、銅助触媒を用いることにより、アルキンがジアステレオ選択的にアルケンに水素化される。銅助触媒上での反応は光触媒から切り離された触媒反応であることから、わずかな加熱により水素化過程が著しく加速されることも見いだしている。光触媒作用と熱触媒作用の協奏効果を示した報告でもある。この成果を各種学会にて報告し、また、その成果をまとめた論文が学術雑誌Journal of Catalysisに受理された(掲載決定、YJCAT13214)。現時点でサンドイッチ構造の半分が構築されたことを示しており、予定通りの進捗状況であると考える。現在は、効果的な有機鎖構造の探索、および、半導体-有機鎖構造に異種半導体を導入する検討を始めており、可能性と課題が見えてきている。一方で、詳細は省くが、研究課題から派生して新規な光触媒反応系を見い出しており、2報目の論文を準備している。以上を総合的に判断し、期待通り研究が進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載したように、酸化タングステン、酸化チタン、有機化合物(7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)の3種類によって構成されるサンドイッチ型構造を有するハイブリッド光触媒を合成する。その際、酸化チタンや酸化タングステンの比表面積の影響について確認するため、それぞれの合成法・条件を検討する。調製したWO3-TCNQ/TiO2-Ptを用いて、青色および緑色LED光源からの可視光を利用して、アルコールやグリセリン、アンモニアからの水素生成反応を検討する。この際、青色吸収・酸化反応場(WO3)、緑色吸収場(TCNQ/TiO2)、還元反応場(Pt)として、それぞれ機能を発揮し、効率的な電荷分離の促進が期待される。 予想される励起メカニズムによって光触媒が駆動しているかを明らかにする。青色光または緑色アシスト光照射下において、多波長照射分光器の単色光を用いることで、波長依存性を確認し、本光触媒の駆動メカニズムを明らかにする。固体触媒内の二段階光励起の達成により、効率的な電荷分離が可能かどうかを評価する。 その後、有機鎖の多様性について確認するために、TCNQ以外にさまざまな有機化合物(有機鎖が拡張されたものや他の官能基を有するもの)を検討し、多彩な可視光吸収を示す材料をTiO2に修飾する。これらの光触媒の可視光水素生成活性を評価・比較することで、異種半導体-有機鎖サンドイッチ構造の応用性について確認する。
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