【本研究の目的】本研究は、近年さらに深刻度を増す薬剤耐性菌について、環境中での動態研究を行うものである。薬剤耐性菌の拡散機構の把握には病院外環境を含めた網羅的な調査が不可欠であるが、自然環境中の細菌は9割以上が培養できない菌(未培養菌)であり、環境中の薬剤耐性菌の実態解明は困難である。最近、マクロライド系抗生物質への新規の薬剤耐性遺伝子であるmef(C)とmph(G)が日本の沿岸養殖場の海水から発見された。申請者の前年度の研究では、mef(C)-mph(G)の起源と拡散機構の調査を行った。その結果、この遺伝子は台湾の養豚場を起源とし、河川に広く存在することが示唆された。本研究では、細胞レベルでmef(C)-mph(G)の検出を行うため、Two-Pass TSA-FISH法を用いた新たな薬剤耐性遺伝子検出手法の確立を目指す。 【研究成果】PCRを用いてジゴキシゲニンをラベルしたプローブを713 bpと562 bpの2種類作成した。プラスミドpGEM-T easyベクターにクローニング法を用いてmef(C)-mph(G)を挿入しこれを大腸菌に導入した。 mef(C)-mph(G)を挿入したベクターを導入した大腸菌を0.2 μm孔径のヌクレポアフィルターに濾過した。前述した2種のプローブを加え、46度でハイブリダイゼーションを行った。その後、二度の抗原抗体反応によって標的遺伝子であるmef(C)-mph(G)の蛍光シグナルを増幅し、蛍光顕微鏡で観察した。結果として、蛍光を発する細胞がほとんど見られなかったため、細胞数、ハイブリダイゼーションの条件の検討を行ったが、安定した蛍光シグナルの検出はできなかった。その原因として、標的遺伝子のコピー数が検出感度以下であったこと、もしくは細胞内にプローブが入っていかず、ハイブリダイゼーションが効率的に行われなかったことが考えられる。
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