研究課題
スピンの歳差運動の波である,スピン波(SW)をキャリアとして利用したSW回路は,低消費電力な素子を実現可能な技術として注目されている。しかし,SWは伝搬距離が短いためSW回路間の通信が課題となっていた。本研究課題の目的は,光配線技術をSW回路間に適用したSW分散型演算回路の開発である。SW回路の演算結果を,光を用いて検出し,次段のSW回路へと接続することで,SW回路を用いた情報処理システムの構築を可能にする。本年度は,SW分散型演算回路の小型化に必要な,薄膜イットリウム鉄ガーネット(YIG)中を伝搬するSWを用いたNANDゲートの動作実証と,格子不整合によるYIGの磁気異方性の変調を行った。従来のSW論理ゲートは,SW回路の演算結果を取得する光干渉リングと比べて,サイズが桁違いに大きく,集積化が困難であった。論理ゲートの小型化には,SWの短波長化が有効であるが,導波路としてSWがシングルモードで伝搬可能な薄膜YIGを用いる必要があった。そこで,膜厚350ナノメートルのYIG上に,NANDゲートとして動作する3入力1出力のSW位相干渉器を作製した。YIGの不要な部分を金属でカバーする,メタルクラッド構造を用いて位相干渉器を作製した結果,SWの干渉によるNANDゲートとしての動作を実証した。一方,磁性体を薄膜化すると,形状磁気異方性の影響によって,SW励起に必要な磁界が大きくなる。SW分散型演算回路を小型化するには,YIGを磁化飽和させるために必要な磁界の低減も必要である。そこで,基板とYIGの格子不整合に起因する応力を利用して,磁気異方性を変調した。異なる格子定数を持つ複数の基板上にYIGを形成し,SWの伝搬特性を評価した結果,最も大きな応力が加わったネオジムガリウムガーネット基板を用いることで,磁化飽和に必要な磁界を半分以下に抑えることに成功した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Advanced Electronic Materials
巻: 4 ページ: 1800106~1800106
10.1002/aelm.201800106