研究課題
本年度は、Burkholderia vietnamiensis RS1株により促進される窒素形態を明らかにするため、硝酸を15Nでラベルした硝酸アンモニウムを施用し、非接種区とRS1株接種区で15Nの吸収量を比較した。その結果、RS1を接種したイネでは非接種区のイネと比べて、硝酸態窒素をより多く吸収していることが明らかになった。一方アンモニア態ではそのような増加が見られなかった。このことからRS1株を接種したイネでは、特に硝酸態窒素の吸収が促進されていることが示された。またB. vietnamiensis RS1株は、高酸素濃度に応答してEPSを生産し、液体培地を固化させる性質を持つ。RS1株におけるEPS生成と窒素固定活性の関連性を明らかにするため、大気酸素濃度条件でEPSを生産しない変異株を作出した。RS1株のゲノムへトランスポゾン配列をランダムに挿入し変異体群を作出した。これら変異体群のスクリーニングの結果、大気酸素濃度条件下でも液体培地を固化しない1変異体が選抜された。この変異体では、野生株と比較して、窒素固定活性(ARA)および窒素固定関連遺伝子(nifH、 nifD、 nifK)の発現が顕著に低下していた。さらにインバースPCR法によってトランスポゾン挿入部位を調べたところ、膜タンパク質であるDsbDをコードする遺伝子(dsbD)にトランスポゾンが挿入されていることが明らかとなった。以上の結果からdsbD遺伝子がEPSの生成や分泌に関与し、酸素存在下におけるin vitroでの窒素固定活性の維持に不可欠であることが示唆された。またこのdsbD変異株をイネに接種したところ、イネ根への侵入、硝酸体窒素の吸収促進、および生育促進がRS1株(野生株)と比較して顕著に低下し、dsbD遺伝子がイネへの感染および生育促進に深く関与している可能性が示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plant and Soil
巻: 450 ページ: 537-555
https://doi.org/10.1007/s11104-020-04506-3
RSC Advances
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https://doi.org/10.1039/C9RA05477D