過去に実施した研究においては、運動強度を条件間(低酸素または通常酸素)で相対的に統一して外因性のグルコース酸化動態を検討した。しかしながら低酸素環境下においては最大酸素摂取量(VO2max)が低下するため、運動強度を相対的に統一(%VO2max)した場合、絶対的な運動強度(走速度)は低酸素環境下において有意に低下する。これに伴い低酸素条件での運動は、通常酸素条件での運動と比較して運動中のエネルギー消費量が有意に低下する。運動中のエネルギー消費量はエネルギー基質の酸化量に大きく影響を及ぼすため、運動中のエネルギー消費量を統一した条件下において外因性のグルコース酸化動態を検討することが必要となる。そこで本年度は低酸素環境下で行う持久性運動が外因性グルコースの酸化動態に及ぼす影響を、通常酸素環境下で行う同一走速度での運動時と比較・検討した。9名の活動的な男性を対象に、最大酸素摂取量(VO2max)の65%に相当する走速度での30分間のランニングを通常酸素環境(吸入酸素濃度:20.9%、通常酸素条件)で実施した。また、低酸素環境下(吸入酸素濃度:14.5%)において通常酸素条件と同一走速度(低酸素A条件)および相対的同一走速度(低酸素R条件)での運動をそれぞれ異なる日に実施した。運動開始直前に安定同位体(13C)を標識したグルコースを摂取し、運動中の呼気中に含まれる13CO2/12CO2の比から13C排出量を算出し、外因性のグルコース酸化動態を評価した。低酸素A条件は通常酸素条件と比較して運動に伴う血中乳酸濃度の上昇の亢進および運動中における糖の酸化量(呼吸交換比による評価)が有意に高値を示した。一方で、運動中における外因性のグルコースの酸化(13CO2/12CO2)は低酸素A条件が通常酸素条件と比較して有意に低値を示した。
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