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2018 年度 実績報告書

生物運動の実空間モデルとしてのミクロ液滴

研究課題

研究課題/領域番号 18J12947
研究機関同志社大学

研究代表者

作田 浩輝  同志社大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワードミクロ相分離 / モデル細胞 / 水性二相分配 / 細胞骨格 / レーザトラップ / 光駆動ポンプ
研究実績の概要

本研究では、生物がnmスケールの分子からどのような機構でマクロな方向性を持った運動を取り出しているか明らかにすべく、運動タンパク質によるモデル実験系の創出を目的とする。研究は、(1)生体由来の分子の運動タンパク質用いて細胞に類似する構造および、運動性を有するモデル実験系の創出、(2)非生体由来の物質の液滴等によるマクロな運動性を有するモデル実験系の創出、の2点について展開をしてきた。
本年度は、(1)では、複数の高分子の混雑したモデル水溶液から、自律的に生成する細胞サイズの液滴を活用して、運動性を創出するための基礎的な成果が得られた。細胞の骨格を形成するタンパク質であるアクチンや数kbpの長鎖のDNAが細胞様の構造を液滴内部で自発的に形成することを明らかにした。(中谷、作田ら、ChemBioChem 2018)また、細胞膜を構成するリン脂質を本溶液系に導入した場合には、液滴の界面リン脂質が集積し細胞膜状の構造を形成することを明らかにした。さらに、同様の実験系を用いて、赤血球やマウスの乳腺由来の上皮細胞が自発的に液滴の内部に局在し、細胞種や場を規定する高分子(例として、デキストランおよびポリエチレングリコール)の組成によりその局在性が異なることも明らかにしている。(作田ら、Front. Chem. 2019)
(2)では、油水混合溶液の組成を相分離の臨界点近傍に設定し、局所的にレーザ照射すると、ミクロ液滴が湧出する。この焦点近傍で溶液の深さを空間的に非対称にすると一方向の流動が引き起こされることを明らかにした。nmスケールの分子によるマクロな運動の創出の理解のみならず、光駆動ポンプとしての発展も期待される。(作田ら、J. Phys. Chem. Lett., 2018)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、生物がnmスケールの分子からどのような機構でマクロな方向性を持った運動を取り出しているかを明らかにすべく、(1)生体由来の分子による細胞構造と運動性の形成を行うモデル実験系の創出、(2)非生体由来の物質によるマクロな運動性を有するモデル実験系の創出の2点を課題として進展させてきた。(1)では、運動性を有するモデル実験系の基礎として、生体内部のような高分子の混雑する溶液内で運動を誘起する一因となるアクチンから細胞様の構造が得られることを明らかにし、論文にすることができている。さらに比較検討で生細胞を上記と同じ実験系で取り扱った場合に細胞集団が3次元構造体を自発的に形成することが当初予想されなかった新規の現象として明らかとなった。(2)では、非生体分子から上述の課題を達成する現象の一例を本年度は明らかにし論文として報告を行った。

今後の研究の推進方策

(1)生体由来の分子による細胞構造と運動性の形成を行うモデル実験系の創出については、本年度の研究成果を元に、アクチンと運動タンパク質であるミオシンや同じ運動タンパク質のキネシンと微小管の組み合わせを上記の実験系に導入することにより、運動タンパク質を取り込んだミクロ液滴の運動や変形を誘起するモデル実験の創出を目指す。(2)非生体由来の物質によるマクロな運動性を有するモデル実験系の創出では、運動性を持つとともに、より生命らしい性質を持ったモデル実験系の創出を目指し、生命現象の理解に貢献するモデル実験系へと発展を模索する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] University of Heidelberg/University of Stuttgart(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      University of Heidelberg/University of Stuttgart
  • [国際共同研究] City University of New York(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      City University of New York
  • [雑誌論文] Aqueous/Aqueous Micro Phase Separation: Construction of an Artificial Model of Cellular Assembly2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Sakuta, Tadashi Fujimoto, Yusuke Yamana, Yusuke Hoda, Kanta Tsumoto, Kenichi Yoshikawa
    • 雑誌名

      Frontiers in Chemistry

      巻: 7 ページ: 1944/1-7

    • DOI

      10.3389/fchem.2019.00044

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Optical Fluid Pump: Generation of Directional Flow via Microphase Segregation/Homogenization2018

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Sakuta, Shunsuke Seo, Shuto Kimura, Marcel Horning, Koichiro Sadakane, Takahiro Kenmotsu, Motomu Tanaka, Kenichi Yoshikawa
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry Letters

      巻: 9 ページ: 5792-5796

    • DOI

      10.1021/acs.jpclett.8b01876

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Specific Spatial Localization of Actin and DNA in a Water/Water Microdroplet: Self-Emergence of a Cell-Like Structure2018

    • 著者名/発表者名
      Naoki Nakatani, Hiroki Sakuta, Masahito Hayashi, Shunsuke Tanaka, Kingo Takiguchi, Kanta Tsumoto, Kenichi Yoshikawa
    • 雑誌名

      ChemBioChem

      巻: 19 ページ: 1370-1374

    • DOI

      10.1002/cbic.201800066

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Spontaneous Specific Localization of Actin and DNA in Cell-sized Water/Water Micro Droplet2018

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Sakuta, Kingo Takiguchi, Kanta Tsumoto, Kenichi Yoshikawa
    • 学会等名
      International symposium on Artificial Cell Reactor Science and Technology
    • 国際学会
  • [学会発表] Spatial Cooperation between DNA and Actin in Micro-Confinement Generated through Spontaneous Phase Segregation2018

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Sakuta, Masahito Hayashi, Kingo Takiguchi, Kanta Tsumoto, Kenichi Yoshikawa
    • 学会等名
      第56回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] Self-Emergence of Cell-Like Structure of Actin and DNA in Cell-Sized Aqueous/Aqueous Micro Droplets2018

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Sakuta, Kingo Takiguchi, Kanta Tsumoto, Kenichi Yoshikawa
    • 学会等名
      International Conference on Advances in Physics of Emergent orders in Fluctuation(APEF 2018)
    • 国際学会
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://dmpl.doshisha.ac.jp/

  • [産業財産権] マイクロ液滴及びその作成方法2018

    • 発明者名
      剣持貴弘、作田浩輝、貞包浩一朗、吉川研一
    • 権利者名
      剣持貴弘、作田浩輝、貞包浩一朗、吉川研一
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2018-242397

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公開日: 2021-01-27  

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