研究課題/領域番号 |
18J12956
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高橋 優 慶應義塾大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 胎盤 / 胎児成長 / アミノ酸 / トランスポーター / miRNA |
研究実績の概要 |
小型中性アミノ酸輸送体SNAT2は、ヒト胎盤刷子縁膜に発現して胎児成長に重要なアミノ酸供給を担う。胎盤におけるSNAT2発現低下は、子宮内胎児成長遅延との関連が示されており、その病態の理解および診断法や治療法、予防法の提案をする上でSNAT2発現制御機構の理解は重要である。ラットにおいても、in vivoで胎盤SNAT2の発現変動が示された。そこで、ラット胎盤とそのin vitroモデル細胞を用いて、SNAT2発現制御機構を解明し、その分子機構に基づいた胎盤SNAT2発現可視化マーカーの同定を目指した。 SNAT2発現変動は、そのmRNAの分解速度が変化することで生じる。そこでmRNA分解を促進するmiRNAに着目し、SNAT2発現制御miRNAを同定することとした。主としてmiRNAは、分解するmRNAの下流に位置する3’非翻訳領域に結合し作用する。SNAT2が持つ全長約2.7 kbaseの 3’非翻訳領域の内、SNAT2 mRNAの安定性に寄与する領域を検討した結果、約200 baseまで限定することができた。塩基配列を基に、その領域に結合しうるmiRNAを選定し、SNAT2発現制御miRNAの候補を5つに絞り込めた。現在は、各候補miRNAの阻害剤を用いた、直接的なSNAT2発現制御の評価を行っている。また、LC-MS/MSを用いた定量的標的絶対プロテオミクスによる胎盤アミノ酸輸送体定量メソッドが確立でき、ラット胎盤刷子縁膜におけるSNAT2を含む5種類の中性アミノ酸輸送体の発現量が定量できた。この結果によると、SNAT2よりも胎盤刷子縁膜に豊富に存在する中性アミノ酸輸送体として、大型中性アミノ酸輸送体LAT1が見出された。LAT1は、必須アミノ酸の大部分を基質とすることからも、SNAT2と同様に胎児成長を促す重要な分子である可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SNAT2発現制御miRNAの候補を5つまで絞り込むことができ、それぞれの阻害剤を用いた実験の条件検討も済んでいることから、その同定も目前である。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、SNAT2発現制御機構の解明を進める。また、食品成分による胎盤SNAT2およびLAT1の発現および機能に対する影響も観察し、胎児成長に寄与する食品成分の探索を行う。
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