研究課題
令和元年度の研究として,(1) 液体アルゴン検出器の改良,(2) 低エネルギー背景事象の理解,の双方に取り組み,最高感度での低質量暗黒物質探索に必須な検出器の低エネルギー閾値化を進めた。前年度までに,光電子増倍管(PMT)を用いた検出器によって世界最高の液体アルゴン光検出効率を達成していた。これを受け本年度はより高い光検出効率を持つ光増倍管であるシリコン光検出器(SiPM)の導入を行い,検出効率を更に向上させた。小型の液体1相検出器による試験を行い,約25 p.e./keVの検出光量を確認した。これは従来の約2倍の値である。この成果によって,シンチレーション光波形の持つ強力な背景事象分離能力を活用した暗黒物質探索が現実的なものとなった。また,暗黒物質探索において最後まで残る背景事象である低エネルギー電子反跳事象および環境中性子事象について,それらに対する検出器応答や残存量を前年度末に取得したデータ解析から評価した。前者については,アルゴン中の放射性同位体37Arを含む多種多様なエネルギーを持つガンマ線源を用いたデータの取得を通じて検出器応答の包括的理解を得た(学術論文投稿済,現在査読中)。特に37Arは内部背景事象源であり,測定されたレートも背景事象量を評価する上で重要な情報である。また後者については,シールドおよびヴェト検出器によって宇宙線や環境ガンマ線を十分遮蔽した上で環境中性子事象を観測し,Geant4シミュレーションとの比較を通じて実験場所(早大構内の半地下実験室)における中性子フラックスを評価した。本年度までに得られた種々の背景事象に対する理解をもとにガンマ線および中性子シールドを構築し,小型高感度検出器を用いることで液体アルゴンを用いた低質量領域の暗黒物質を探索する予定である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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