研究課題/領域番号 |
18J13042
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
加川 保昭 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | ガンマ線バースト / 重力波 / X線撮像検出器 |
研究実績の概要 |
連星中性子星合体を起源とする重力波イベントGW170817とその電磁波の観測から連星中性子星合体の理解が大きく進んだ。今後の更なる観測から統計的な議論が期待されるが、方向決定精度の粗い重力波干渉計では重力波源の同定は難しい。そのため、重力波と起源がを同じで同期して発生すると考えられるショートガンマ線バーストやこれに付随する軟X線超過の観測がこれを担うことで、迅速な多波長観測を促し重力波天文学の発展の貢献を目指す。 本研究では2つのアプローチからショートガンマ線バースト等の理解を目指す。 (1)軟X線超過のデータ解析:Swift衛星に搭載されているX線望遠鏡で観測された赤方偏移が分かっている26イベントの軟X線超過の減光を指数関数型とべき関数型の2つのモデルを用いて系統的に解析した。べき関数型に比べ指数関数的の方が、より多くのイベント(95%)の減光を説明し得るより最もらしいモデルであることを確認した。また、モデルフィットで得られた光度と減光時定数に強い相関を確認し、暗いイベントほど放射でのエネルギーの放出効率が悪いを示唆得た。以上の成果を日本天文学会2019年春季年会において報告し、筆頭著者の論文として投稿した。 (2)超小型衛星による重力波対応天体探査を目指した広視野X線撮像検出器の開発:今年度は検出器のフライトモデル相当品と衛星バスコンピュータの原理実証機との噛み合わせ試験を行い、バスから検出器へのコマンド送受信の確立や観測データの地上制御環境への送信を確認した。また検出器オンボードで生成するエネルギースペクトルの仕様検討を行った。これまでのデータ解析から短時間ガンマ線バーストと軟X線放射それぞれに対しての最適な積分時間と各々の放射の継続時間が見積もられており、これらを取得するデータ成形回路の仕様を固めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟X線超過の時間的振る舞いに対しての系統的な解析からそのエネルギー源は高速回転する強磁場中性子星の指数関数的な減速、あるいは形成されたブラックホールと降着円盤への飛散した物質の再降着する際のエネルギー解放で説明できる可能性があることを示した。このデータ解析に予定よりも時間を費やしており、検出器開発、特にデータ解析で得られる知見を反映するエネルギースペクトル生成ロジックは仕様を固めた段階で、FPGAへの実装には至っていない。しかし、1か月程度の時間で実装可能と見込んでいるため、研究計画に大きな変更はない。次年度打ち上げ予定であったが、JAXAからの超小型衛星の相乗り公募が出ていないため、採択期間内での衛星打ち上げ・観測は不可能な状況である。代わりに地上で可能な限りの機能検証・性能評価を行うことで実際の軌道上での運用に備える。
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今後の研究の推進方策 |
検出器開発では未着手となっているエネルギースペクトル生成ロジックのFPGAへの実装を行う。また、撮像検出器の有効面積の測定、精密な撮像性能の確認を行い、検出器フライトモデルの機能検証・校正を行う。今年度で検出器開発を終えることを目的とする。データ解析については、軟X線超過のスペクトルに対し多温度の黒体放射モデルを用いた解析を行う。これにより、軟X線超過がコクーンと呼ばれる準相対論的な物質流からの熱放射である可能性を検討する。
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