研究課題/領域番号 |
18J13050
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
楊 佳嘉 名古屋大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 女性知識人 / 森三千代 / 女人芸術 / 越境 / 中国表象 / 日中交流 / 女性雑誌 |
研究実績の概要 |
当該年度には、研究計画書に従い、戦前の日中関係を女性作家・知識人の交流を通して再検討するという目的にそって、作家を軸とした検討と雑誌などの発表媒体に関する検討を同時に行い、研究を進めている。論文としてA「森三千代の「病薔薇」における日中女性同士の繋がり――「自由」・「愛」・「夢」のために」(名古屋大学人文学研究科『人文学フォーラム』2、2019.3、査読有り)が発表され、B「『女人芸術』における中国表象――越境する女性たちの記録を手掛かりにして」を完成させ現在査読中である(『跨境 日本語文学研究』8)。A論文において、森三千代は事後的にこ中国の女性作家との交流を想起する際、「病薔薇」という自己表象の小説の創作を通して、男性ジェンダー化した文学場で女性作家に付された意味を、女性の文脈に取り戻そうとしている点を論じた。B論文では、『女人芸術』を媒体に、当時の日本女性知識人の中国表象を明らかにし、1930年前後の彼女たちが隣国の中国を見る時の眼差しの多様性と複雑性を明らかにした。学会における口頭発表として、「中本たか子の小説における中国表象 ――1930年前後を中心に」(2018 年日本語教育と日本学研究国際シンポジウム、2018年5月12日、於中国同済大学)、「『女人藝術』における中国表象―中国についての通信/エッセイなどを手がかりに」(日本近現代文学国際シンポジウム:ポストコロニアル批評の最前線、2018年8月13日、於韓国慶熙大学 )、「初期『婦女共鳴』と外国の繋がり」(東アジアと日本語同時代フォーラム 上海大会、2018年10月20日、於中国復旦大学)、「林芙美子の中国紀行文における女性表象――1930年の中国旅行を通して」(立教大学・名古屋大学合同研究会、口頭発表、2019年3月15日、於立教大学など、四本行っており、次年度の論文化が目指されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに2本の論文が完成させ、研究計画のB1(1920年代の日本女性知識人が見た中国 ―― 『女人芸術』を中心に)とC2(1930年前後の森三千代と白薇の交流についての考察を中心に)の研究を完了した。4本の学会発表も行い、論文化作業が進行中です。一年中、時間と体力をかけて、日本と中国の各地方に渡っり、入手し難い資料を手に入れ、これからの研究の基礎資料の収集と準備ができました。B1とC1の研究ぴょび資料調査を通して、さらに1930年前後の中本たか子、林芙美子、平林たい子という三人の日本女性作家の執筆動向、1926-1936年同時代の中国女性作家白薇と謝氷瑩と日本女性知識人の交流および日本認識の問題などの新しい課題にに気づき、初期資料収集の作業も着手し、今後の研究にっとっての土台を築いた。
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今後の研究の推進方策 |
1、従来の研究計画ではマクロ的な視点が多く、研究を進めるうちに、マクロな視点で全体像を把握することができるにも関わらず、細部について明確にされていないものも多いと気づきました。今後は、ミクロな視点で、女性知識人の個人レベルの考察も必要であると認識した。例えば、今後は1930代の日本女性作家である中本たか子、林芙美子、平林たい子や、中国女性作家である白薇と謝氷瑩の発信動向をさらに詳しく考察する予定です。 2、女性知識人の全集や作品集などの出版物が少なく、資料調査と取集は予想以上に時間がかかった。 3、従来の研究計画における戦間期という時代設定がちょっと広すぎるに気づき、一つの研究プロジェクトで論じきれないところが多い。 2と3の問題点について、研究の中心を1926ー1936年に絞っていく予定です。
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