研究課題/領域番号 |
18J13078
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮脇 敦士 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 介護者 / informal care / 社会疫学 / プロペンシティスコア / long-term care / caregiver / 生存時間分析 |
研究実績の概要 |
平成30年度の前半は、まずこもいせコホートデータを確認・成型および先行研究の確認を行った。また、若手研究者海外挑戦プログラムの助成も利用し、ハーバード公衆衛生大学院のProf. Kawachiのもとで研究手法や文脈についても議論し、解析を開始した。その結果をもとに、Bostonで11月に行われた、GSAにてポスター発表を行った(学会発表1)。介護者が非介護者とくらべ、平均すると死亡率が高いわけではないこと、しかし、低い社会経済的ステータスにあるものでは、介護することが死亡リスクを上げる可能性があることを示した。この結果は、Robustness checkを行った後でも変わらなかった。また、その死亡率の上昇は、冠動脈疾患により死亡率上昇で説明できる可能性が示された。これらの結果は最近の米英の先行研究における介護の死亡率低下の関連とは異なる結果であった。 これらの結果をもとに、論文を執筆し、出版に至った(論文1)。また、付随的な共同研究として、同じコホートを用いて、相対的剥奪感が死亡に与える影響(査読中)、退職前後での社会経済的因子・社会的サポートが死亡に与える影響(論文2)、感覚障害が死亡に与える影響(論文3)についても検討した。論文2では相対的貧困と不十分なsocial engagementが特に退職後の男性において死亡のリスクとなっていることを示した。論文3においては、自己申告した聴覚喪失が死亡率の上昇と関連し、うつ・社会的参加・移動能力の低下によってはその関連が十分に説明できなかったことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、こもいせコホートデータの解析を首都する予定であり、研究実績に記載の通り、予定通り解析を行った。また、派生した論文も含め4本の論文を執筆、うち3本は国際誌にすでに掲載された。故にこの点では計画以上に進展していると考える。しかし、研究計画で使う予定であった政府統計(国民生活基礎調査・中高年者縦断調査)については、予定よりやや遅れて平成31年2月にデータ利用可能となったため、データクリーニング・解析を開始したところであり、この点ではやや遅れているが、致命的な遅れとはなっていない。故に、自己評価としては、(2)概ね順調に進展、とした。
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今後の研究の推進方策 |
H31(R1)年度は政府統計(国民生活基礎調査・中高年者縦断調査)のデータクリーニングを行った上で、介護と健康アウトカムの関連をさらに検討する。当初予定では中高年者縦断調査のみであったが、国民生活基礎調査を用いることで、外生的な家族介護の変化を観察することができ(介護保険の導入・改正に伴う)統計学的によりバイアスの少ない推定を行うことが可能となる。外生的な家族介護の利用がなされた研究はほとんどないことから、介護の健康アウトカムのトピックにおけるさらなる進展に繋がりうるため、国民生活基礎調査をメインで使うこととした。
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