研究課題/領域番号 |
18J13103
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
檜森 弘一 札幌医科大学, 保健医療学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 関節疾患 / 伸張性収縮 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,関節疾患の筋力低下に対する安全かつ効果的な治療法を確立することであり,平成30年度は,伸張性収縮と電気刺激を併用した(ECC-ES)トレーニングの至適負荷条件を探索する(課題1)とともに,ECC-ESトレーニングがアジュバント関節炎(AIA)ラットの骨格筋に及ぼす影響を検討した(課題2). 課題1では,正常ラットを3群(低,中等度,高負荷群)に分け,20°/s,20収縮のECC-ESをそれぞれ刺激頻度10 Hz,30 Hz,100 Hzで実施した.3週間のトレーニング後,30 Hz以上の強度で筋肥大が誘引されることが明らかとなった.一方,ECC-ESの安全性を検討するため,ラットを対照(CNT)群及び関節炎を惹起したAIA群に分け,損傷性のECC-ES(150°/s,50 Hz,100収縮)を負荷した.その結果,損傷性ECC-ESを負荷した48時間後における損傷筋線維数の割合は,CNT群とAIA群で差異は認められなかった.したがって,AIAラットの骨格筋では,ECCに対する易損傷性が増大しないことが示された.さらに,上記で正常ラットに筋肥大が誘引された条件(20°/s,30 Hz,20収縮)で,ECC-ESをAIAラットに一過性に負荷し,筋損傷が誘引されないことを確認した. 課題2では,課題1で得られた至適負荷条件でのECC-ES(20°/s,30 Hz,20収縮)を2日に1回の頻度で,3週間AIAラットに負荷し,筋機能低下が防止されるかを検討した.トレーニング期間終了後,スキンドファイバーにおける筋原線維機能を測定した.その結果,ECC-ESトレーニングは,AIAラットの腓腹筋のスキンドファイバーにおけるCa2+誘因性最大張力の低下を防止した.したがって,ECC-ESトレーニングは,関節疾患に伴う筋力の低下を防止しうる有望な治療法であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では,課題2でECC-ESトレーニングがAIAに伴う筋力低下を防止したメカニズムを解明することを目的とした生化学的解析を行う予定であったが,いまだ完了できていない.しかしながら,時間は要したが,ECC-ESトレーニングの至適負荷条件を明らかとすることができ,その特定した条件でECC-ESトレーニングを実施することで,AIAに伴う筋力の低下が防止されることがわかった.このことから,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り,ECC-ESトレーニングがAIAラットの筋原線維機能低下を防止することが明らかとなったため,その作用メカニズムを解明することを目的に生化学的解析を実施する.低分子量熱ショックタンパク質は,筋原線維の保護作用を有すること,また,他の収縮様式に比べ伸張性収縮により発現が誘導されやすいことが報告されていることから,これらの分子に着目して検討を進める.また,ヒトを対象にECC-ESの効果を検証する実験を進める予定である.
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