研究実績の概要 |
三量体G蛋白質共役型受容体 (GPCR) シグナルは、Rhoファミリー低分子量G蛋白質 (Rho) を介して細胞形態を制御し、その制御破綻は癌の悪性化に関わると考えられている。本研究では、各種三量体G蛋白質のαサブユニット (Gαs, Gαi, Gαq, Gα12/13) や、βγサブユニット (Gβγ) と相互作用するRho活性化因子 (RhoGEF) を同定することで、GPCRシグナルによるRhoの制御機構の解明を試みた。Gβγおよび活性型Gαsにより直接制御されるRhoGEFとして報告されたPLEKHG2の類縁蛋白質に着目して探索を行った結果、Gβγおよび活性型Gαiにより活性化されるPLEKHG1を同定した。次に、Gαiサブファミリーに属するGαoおよびGαzがPLEKHG1に与える影響を検討した結果、活性型GαoはPLEKHG1依存的Rhoシグナルを賦活化するが、その一方で、活性型Gαzは抑制することがわかった。そして同条件において、活性型GαoはPLEKHG1依存的仮足形成を増強するが、活性型Gαzは仮足形成を抑制することが観察された。またGβγ、Gαi、Gαo、GαzはPLEKHG1と直接相互作用し、PLEKHG1のRhoGEF活性を制御することが示唆された。さらに、これらの三量体G蛋白質は、細胞内でPLEKHG1と競合的に相互作用していることがわかったため、Giシグナルは時間・空間的にPLEKHG1の活性を制御すると考えられた。以上から、Giシグナル依存性RhoGEFとしてPLEKHG1を同定し、制御機構を明らかにしたことにより、細胞形態変化に関わる癌などの疾病に対する創薬の基盤的知見を得られることができた。
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