保育のなかではときに,幼児同士の仲間関係が築かれた後,その関係が固定化してしまうことがある。本研究課題では,そのような固定的な仲間関係を再編する保育者の援助を「ほぐし」と呼び,その援助のあり方を検討した。本年度は,保育の時間的な見通しと「ほぐし」の援助の関連,および幼児が固定的な仲良し関係を超えて他児と相互作用をもつことが可能な遊びの特徴について検討した。 まず,保育者30名に対して,時間にかかわる情報を可能な限り統制した“親密すぎる二者関係”の事例を提示し,援助を構想する際に保育者はどのような時間情報を必要としているかを検討した。得られた語りを切片化した後,時間にかかわる語彙が含まれている切片を抽出し,その語りの内容についてKJ法を用いて分析した。結果,保育者たちは“親密すぎる二者関係”に対して,将来的な変化を期待しつつ,保育の進行とともに徐々に課題意識を高めていくだろうと考えていること(例えば,進級して間もない春先なら良好な関係だが2学期まで続くと不安),またそこで用いられる援助は各所属園における実践の見通し(例年における行事や遊びの導入)と関連づけて構想されうることが示唆された。 次に,保育者が遊びの充実を図るという「ほぐし」の援助の特徴から,幼児が固定的な仲良し関係を超えて他児と相互作用をもつことが可能な遊びの特徴について検討した。ときに排他的な行動をとる親密な年少児クラスの女児2人組を,3学期の約1ヶ月半にわたって自然観察によって追跡し,自由遊びの様子を事例に書き起こして分析した。事例を分析した結果,目的やルーティンが不明確な遊びが,固定的な仲良し関係を築いた幼児が,他児の遊びに楽しさを見出して参加し関わりをもつための媒介となっている可能性が示唆された。
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