研究課題
カロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチンは、日本の代表的なカンキツ類であるウンシュウミカンに多く含まれている。国内外のヒトの栄養疫学調査や実験動物を用いた基礎研究により、骨粗鬆症、肥満あるいは脂肪肝などの様々な生活習慣病に対するβ-クリプトキサンチンの発症・進展抑制効果が明らかになっている。変形性膝関節症(OA)は、機械的負荷による関節炎症、腫脹や疼痛を生じる疾患であり、ロコモティブシンドロームの主要因となっている。本研究では、OA発症・進展に対するβ-クリプトキサンチンの治療効果をモデル動物を用いて検証した。まず、β-クリプトキサンチン投与群及びVehicle群の8週間の飲水量測定を行った。その結果、投与したβ-クリプトキサンチンの濃度にかかわらず、マウスによる飲料水の1日摂取量に有意な変化は観察されなかった。さらに、β-クリプトキサンチン投与は、マウスの体重や解剖後の組織重量、またはマウスの自発的行動に影響を与えなかった。また、Vehicle群と β-クリプトキサンチン投与群との間で、両群の Sham側における顕著な形態学的差異はみられなかった。一方、Vehicle群ではSham側と比較して、外科的誘発 OA側の膝関節部における顕著なSafranin O 染色性の低下が観察された。しかし、β-クリプトキサンチンを 1 mg/Lおよび 10 mg/Lで投与した場合、外科的に誘発されたOA側の膝関節部において、Safranin O 染色性の改善は観察されなかった。また、OARSIによって推奨された組織学的採点システムを用いてデータを評価した。その結果、すべての β-クリプトキサンチン投与群においてOA損傷のスコアには差が認められなかった。以上の結果により、β-クリプトキサンチンのOAに対する治療効果は確認できなかった。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究により、β-クリプトキサンチンを継続的に経口摂取することにより、変形性関節症(OA)の発症が著明に抑制されることを見出した。すなわち、β-クリプトキサンチンにはOAに対して予防効果があることを明らかにした。本年度は、β-クリプトキサンチンの飲水投与が予防効果のみならず、OA発症後の治療効果も併せ持つかを検討した。そのため、OAモデルマウスを作成し(疑似手術:Sham側、手術側:OA側)、8週間の β-クリプトキサンチンの飲水投与を行い、膝関節部のラフィン切片を作成した。作成した切片は Safranin O 染色により、膝関節の OAの進展度を評価し、 OARSI 提唱の組織学的定量化システムにより定量化した。まず、β-クリプトキサンチン投与群及びVehicle群の8週間の飲水量測定を行った。その結果、β-クリプトキサンチン投与は、マウスの体重や解剖後の組織重量、またはマウスの自発的行動に影響を与えなかった。また、Vehicle群と β-クリプトキサンチン投与群との間で、両群の Sham側における顕著な形態学的差異はみられなかった。一方、Vehicle群ではSham側と比較して、外科的誘発 OA側の膝関節部における顕著なSafranin O 染色性の低下が観察された。しかし、β-クリプトキサンチンを 1 mg/Lおよび 10 mg/Lで投与した場合、外科的に誘発されたOA側の膝関節部において、Safranin O 染色性の改善は観察されなかった。また、OARSIによって推奨された組織学的採点システムを用いてデータを評価した。その結果、すべての β-クリプトキサンチン投与群においてOA損傷のスコアには差が認められなかった。以上の結果により、β-クリプトキサンチンのOAに対する治療効果は確認できなかった。
16週間のβ-クリプトキサンチン投与に対するOAの治療効果を検討する。麻酔下のC57BL/6雄性マウス(8週齢)の左脚の膝関節部の皮膚切開により膝蓋骨を露出させ、内側半月板と内側側副靭帯を切離することによりOAモデルマウスを作成する。コントロールとしては、右脚の膝関節部を皮膚切開後に縫合する。術後16週間目(OAの進行が組織学的に確認できるステージ)から、β-クリプトキサンチンを10 mg/Lの濃度で飲水投与を開始する(予防効果の確認できた濃度を使用)。2日に一度、飲料水を交換する。β-クリプトキサンチンを16週間連続投与し、膝関節部のパラフィン切片を作成し、Safranin O染色により、膝関節のOAの進展度を評価し、Osteoarthritis Research Society International(OARSI)組織学的定量化システムにより定量化する。さらに、マイクロCTにより軟骨の損傷度を測定することでOA進展度解析を行う。また、β-クリプトキサンチンの血中および膝関節組織への組織移行によるβ-クリプトキサンチンの体内吸収率について検討を行う。β-クリプトキサンチンを実験動物に経口投与した後、血液および滑液、膝関節組織を採取し、β-クリプトキサンチンの量をHPLCにより定量解析する。さらに、 軟骨細胞からRNAおよびタンパク質を回収し、軟骨分化・成熟化マーカー(Col2a1やAggrecanなど)、各種転写制御因子(Sox9やRunx2など)、および軟骨分解に関与する酵素群(Adamts5やMmp13など)の発現を比較検討する。さらに、軟骨細胞の培養上清に放出される各種サイトカイン(IL1β・IL6など)量をELISA法によりを測定する。
すべて 2018
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