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2018 年度 実績報告書

アフリカにおける汚職と「公」概念の動態性:タンザニア・バリアディでの実地調査から

研究課題

研究課題/領域番号 18J13326
研究機関東京大学

研究代表者

味志 優  東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワードアフリカ / 人類学 / 汚職 / タンザニア / 公
研究実績の概要

今年度は主に(1)日本アフリカ学会学術大会での口頭発表と(2)タンザニアのバリアディ県農村における約6ヶ月の現地調査、を行った。端的に言えば本研究は、現地調査を主な手法として、汚職をめぐる人々の社会生活、そして汚職と密接に関連する公という概念の実態やその変化の解明を目指すものであるが、その目的に照らして充実した研究を実施することができた。
まず(1)に関しては、タンザニアの現マグフリ政権における反汚職政策の実態について、関連するニュースや文献を踏まえて分析を行った。農村の状況のより良い理解のためには、人々を取り巻く国際的、そして国内全体の環境も整理する必要があり、こうした分析の実施及び学会を通じた意見交換は大変意義のあるものだった。
次に(2)の現地調査についても順調に遂行することができた。本研究の本来の想定は以下のようなものであった。つまり、タンザニアを含むアフリカにおいては、西洋由来の公の概念とは異なる形の公の概念が存在してきたが、西洋由来の公の概念の普及を促すグッド・ガバナンス政策が広く実施される中で、人々が時には強い公論を展開しながら、アフリカ独特の公の概念と西洋由来の公の概念の間を揺れ動き、あるいは新たな概念を形成しているのではないか、というものだ。
しかし、少なくとも私の現地調査においてはそのような状況は観察されなかった。観察された状況は、複数の公の概念を巡って揺れ動く人々のあり方というよりかは、個別の汚職案件に対する自らの立場に応じて汚職の善悪に関して異なる基準を採用しながら、公の場では自らの汚職の関与を否定し、隠れた場では疑いのある人物に対して非難を行う、というものであった。本年度は、こうした実状の分析に当たり、汚職という概念や行為が持つ本質に着目することを、新たなアプローチとして整理した。このアプローチについては以下の「推進方策」で後述する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現地調査に関して、語学と内容の面から進捗状況を整理する。端的に言えば、双方に関して本来の想定通りに完全に進行したわけではないが、おおむね順調に進展している。
まず語学について、タンザニアで広く用いられているスワヒリ語と、調査を行っている農村で主に用いられているスクマ語の習得を現地で行った。スワヒリ語については渡航前から問題なく意思疎通できる程度に習得していたが、当該農村の人々は、本来想定していたよりも高い頻度でスクマ語を話しており、スワヒリ語だけでなくスクマ語の一定程度の習得は当該農村における現地調査において不可欠であることが分かった。しかし、スクマ語については英語文献であっても整理された教科書が入手不可能であり、現地でほとんど一から学ぶ必要がある。そのためこのスクマ語の習得には本来の想定以上の労力がかかったが、研究の進行に支障をきたすほどではない。
現地調査の内容に関しても、上記の通り、本来の想定とは異なる状況が観察された。しかし、現地調査に当たって想定通りに物事が生じることはむしろまれであり、また以下の「推進方策」で後述するように、状況の分析に当たって新たな視角を考察したため、特に大きな問題は生じていない。

今後の研究の推進方策

2019年度は新たに約4ヶ月のフィールドワークを実施し、それまでの調査結果の分析を行い、論文の執筆を行う。調査の分析については、「実績の概要」で述べたように、本研究の本来の想定とは異なる状況が観察されたことを踏まえて、汚職の概念や行為が本質的に持つ性質に着目するという新たな視角を採用して行う予定である。
先行研究の渉猟や現地調査を通じて、汚職の概念や行為が本質的に持つ性質及びそれに基づいた分析の仕方については、既にある程度整理した。例えば、汚職行為は当然のことながら基本的に隠れて行われることが多く、それゆえその証拠が容易には特定されない。そのため、特に農村に存在しているような、距離が近い中で展開されている人間関係においては、容易に誰かの汚職行為について公に非難することは基本的にためらわれる。しかし、証拠が特定されにくく、いわゆる「白か黒」が判別しにくいという汚職行為の性質は、逆説的にも、証拠がなくとも汚職の疑いが人々に残り続けてしまうという状況を引き起こし、陰の閉じられた場では汚職行為への非難が続くのではないか、というものである。
このように、2019年度は汚職という概念や行為がそもそもいかなる性質を持つものなのか、という点を整理して、現地の状況の分析に役立てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] タンザニアの「ブルドーザー」?マグフリ政権期における反汚職政策ーその実態の検討及び他国への示唆ー2018

    • 著者名/発表者名
      味志優
    • 学会等名
      日本アフリカ学会第55回学術大会

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公開日: 2019-12-27  

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