オートファジーが誘導されると液胞上の一点に隔離膜(IM)が形成され、最終的に二重膜のオルガネラであるオートファゴソーム(AP)が完成する。オートファゴソーム形成過程においてAtg8は合成されるとすぐにシステインプロテアーゼであるAtg4によってC末端のアルギニン残基が切断されてグリシン残基が露出する(Atg8G116)(切断反応)。その後Atg8はユビキチン様結合反応系によりリン脂質ホスファチジルエタノールアミン(PE)の修飾を受けAtg8-PEとなる。AP形成過程においてAtg8-PEはAtg4によって切断を受け、Atg8が遊離する(脱脂質化)。脱脂質化はオートファゴソーム形成に重要であるが、その分子メカニズムについては不明な点が残されている。本研究では、共同研究グループによって解かれた出芽酵母Atg4の結晶構造をもとに、Atg4によるAtg8-PEの脱脂質化のメカニズムを調べた。 Atg4の構造をすでに報告されているヒトAtg4の構造と比較したところ、出芽酵母に特異的な領域が存在することがわかった。この領域を欠損させて表現型を解析したところ、この領域がAtg8-PEの脱脂質化とAtg4のIMへの局在に重要であることが明らかとなった。さらに構造解析の結果から、この領域には両親媒性ヘリックスが含まれる可能性が示唆された。そこで両親媒性ヘリックスの疎水性面を構成するアミノ酸残基に変異を加えたところ、脱脂質化が阻害されることが示された。また、Atg4の両親媒性ヘリックスをAtg4以外のタンパク質の両親媒性ヘリックスと入れ替えたところ、脱脂質化の阻害が回復していた。これらの結果から、Atg4は両親媒性ヘリックスを使ってIMに局在して脱脂質化を行っている可能性が示唆された。
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