研究課題/領域番号 |
18J13522
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 匠 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 量子ドット / 量子情報処理 / 量子シミュレーション / スピン量子ビット |
研究実績の概要 |
当該年度の研究では実施計画の通り5重量子ドット試料を作製し、傾斜磁場ESR法の適用による各ドットにおけるスピン量子ビット操作に取り組んだ。新たに作成した5重量子ドット試料は、前回作製したものからその試料形状を最適化した上で4重量子ドットにおける実験でも実績のあるものと同形状の微小磁石を用いた。この試料をもちいることで各ドットがトンネル結合した5重量子ドットの形成に成功し、各ドット中の電子数を少数電荷領域に調整できることも確認された。これはスピン量子ビット操作に向けた重要の一歩である。また、同試料を用いて多重量子ドットの量子シミュレーションへの応用にも取り組んだ。同シミュレーションには量子ドットのエネルギー準位や結合を正確にそして独立に調整することが必須であるが、意図しない静電容量の存在によってそれらの独立操作はこれまで難しかった。これを解決する方法として複数の電圧操作を組み合わせることで各数値を独立に操作する手法が考案されており、本研究ではこの手法の導入を行った。この手法では量子ドット、ゲート電極間の静電容量をすべて見積もる必要があるが、この過程を簡略化・自動化することで高速化し、この手法を用いた実験を円滑に執り行う仕組みを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究では実施計画の通り5重量子ドット試料を作製し、傾斜磁場ESR法の適用による各ドットにおけるスピン量子ビット操作に取り組んだ。新たに作成した5重量子ドット試料は、前回作製したものからその試料形状を最適化した上で4重量子ドットにおける実験でも実績のあるものと同形状の微小磁石を用いた。この試料をもちいることで各ドットがトンネル結合した5重量子ドットの形成に成功し、各ドット中の電子数を少数電荷領域に調整できることも確認された。その後スピン読み出しや傾斜磁場ESR法によるESR信号の観測に取り組んだが、各パラメータの最適化がまだ完了しておらず、現状ではその観測には至っておらず、現在はパラメータの調整及び新規試料の作製について検討中である。 これはスピン量子ビット操作に向けた重要の一歩である。また、同試料を用いて多重量子ドットの量子シミュレーションへの応用にも取り組んだ。同シミュレーションには量子ドットのエネルギー準位や結合を正確にそして独立に調整することが必須であるが、意図しない静電容量の存在によってそれらの独立操作はこれまで難しかった。これを解決する方法として複数の電圧操作を組み合わせることで各数値を独立に操作する手法が考案されており、本研究ではこの手法の導入を行った。この手法では量子ドット、ゲート電極間の静電容量をすべて見積もる必要があるが、この過程を簡略化・自動化することで高速化し、この手法を用いた実験を円滑に執り行う仕組みを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在の試料を用いて量子シミュレーションに関する実験に取り組む予定である。これまでの進捗状況で述べたように、多重量子ドットの各パラメータを独立に制御する手法を導入したため、これを用いることで多重量子ドットのスピン状態について1次元フェルミハバード模型としての応用が可能であると期待される。その取り組みとして4重量子ドットにおいて4つの電子スピンすべてのスピン状態を測定する手法を考案している。この手法ではこれまで用いられなかった電圧操作を用いることで比較的容易にすべての電子スピン状態を測定する電荷状態へ遷移させることができると数値計算で判明しており、これを実際の量子ドット試料で実証することを予定している。 スピン量子ビットとしての研究では、改めて各パラメータを調整しなおして傾斜磁場ESR法によるESR信号の観測に取り組む予定である。
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