研究課題
本研究では半導体横型多重量子ドットのアナログ量子シミュレーションへの応用に関してこれまで取り組んできた。本年度は、同試料の特定条件下の電荷状態分布中における4電子スピン状態についてさらなる数値解析を行った。互いに等しくトンネル結合した無限長の1次元スピン配列を考えた場合、基底状態は反強磁性的な、電子スピンが互い違いの方向を向いた状態になることが期待されており、数値計算でのその再現を行ったが、スピンが4つの場合(一次元四重量子ドット)では必ずしもそのような状態が基底状態になるわけではないことが数値計算からは推測され、反強磁性的状態とそれ以外の状態の混成状態が予測された。ただし各量子ドット間のトンネル結合を調整することで反強磁性的状態の割合が極大になることが予想され、このような基底状態の変化が昨年度の研究で提案した電子スピン状態の測定手法を用いて検出されることが予想された。また、元の研究計画とは異なるが、偏光‐スピン相関を持った光子‐電子対の生成実験に取り組む同研究室内別グループに参加し、多重量子ドットの実験で得た技術やノウハウを用いて実験に参加・協力した。同グループではこれまでの成果としてZeeman分離した軽い正孔の選択励起を試みることにより、単一光子の量状態転写に成功し、単一の偏光もつれ光子対から光子-電子対を生成することにも成功している。そこで現在は、この2つの実験技術を組み合わせることにより、偏光のもつれあった光子対から偏光とスピンの間に相関を持った光子-電子対が生成されるかを検証する実験を行っていた。これらの実験においては二重量子ドットの形成と調整、および電荷状態の感度良い計測が必須となっており、それらの条件に関して私がこれまで培ってきた技術やノウハウを用い、実験を効果的に進める補助となることができた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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