本研究の目的は,応募者のこれまでのネットワーク脆弱性に関する研究成果を踏まえ,災害時における交通ネットワークの機能不全のメカニズムを解明し,リスクマネジメント理論を構築することにある.まず,交通工学およびネットワーク科学の両分野におけるネットワーク脆弱性に関する従来研究の体系的なレビューを行い,災害時における交通ネットワークのマネジメントに関する課題を整理し,これらの課題の解決に応用可能な理論について取りまとめる.次に,災害時において交通ネットワークが超渋滞現象であるグリッドロック状態に陥る過程を,ネットワーク科学におけるカスケード故障と呼ばれる現象として捉え,グリッドロック状態に陥るメカニズムを調べる.最後に,交通ネットワークが機能不全に陥ることを回避するための有効なマネジメントを提案し,その効果を検証する. 平成30年度は,以下の研究を行った. (1) 引用ネットワーク分析を用いた従来研究のレビュー:交通工学とネットワーク科学の両分野における,ネットワーク脆弱性に関する従来研究の全体像を,客観的かつ包括的に把握するため,引用ネットワーク分析を行った. (2) グリッドロック状態に陥るメカニズムに関する研究:従来研究のレビューを踏まえて,交通ネットワークがグリッドロック状態に陥る過程を,ネットワーク科学におけるカスケード故障として捉え,交通ネットワーク上の利用者の経路選択行動がグリッドロック状態の形成に及ぼす影響について分析した.
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