現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画では、GasZの相互作用タンパク質の同定と、その詳細な相互作用関係の解明に主眼を置いていた。まず、GasZの免疫沈降法による相互作用因子の探索については、申請までの期間に確立したミトコンドリア分画法を用いて、OSC抽出液のミトコンドリアフラクションからGasZ抗体を用いた免疫沈降を行って相互作用因子を調べ、Piwiタンパク質とともにヘリカーゼタンパク質であるArmitage(Armi)も相互作用することが明らかとなった。Armiの細胞内局在を調べると、コントロールのOSCではあまりミトコンドリア上には観察されないが、Zucをノックダウン(KD)するとミトコンドリア上に蓄積することが明らかとなった。このミトコンドリアへの蓄積はGasz KDにより減少することが明らかとなり、ArmiはGasZ依存的にミトコンドリア上に蓄積することが示唆された。このように、当初想定していなかったYb bodyからミトコンドリアへのpiRNAプロセシング因子が移行する現象を初めて捉えることができた。次にGasZ, Piwi, Armiの相互作用の階層性を解析した。まずGasZ KD下ではPiwiとArmiの相互作用は維持された。この結果より、PiwiとArmiはGasZ非依存的に、相互作用していることが明らかとなった。また、Armi KD条件下においてもGasZはPiwiと相互作用するが、一方、PiwiのKD下ではGasZとArmiの相互作用は見られなくなった。このことより、GasZとArmiの相互作用はPiwi依存的であることが明らかとなった。同様の条件下でArmiの免疫染色を行うと、Armiはミトコンドリアに蓄積しなくなったことから、ArmiはPiwi依存的にミトコンドリア上のGaszと相互作用することがわかった。このように相互作用の詳細まで突き止めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はGasZ, Armi, PiwiがどのようにしてZucによるpiRNA前駆体の切断を制御しているかを解明することに主眼を置く。具体的には以下の実験を行う。 【1, GasZのRNA結合能の評価】 抗GasZモノクローナル抗体を用いたCLIP法により、GasZに相互作用するRNAを単離し、放射性同位体(RI)標識して検出することで、RNA結合能を評価する。昨年度に大腸菌を用いたGasZ組み換えタンパク質の精製方法を確立しており、上記と平行してGel shift assay法においてもGasZのRNA結合能を評価する。GasZはRNA結合能を有する可能性があるSAMドメインを持つ。GasZのRNA結合能が認められれば、SAMドメイン内の種間で保存性が高い塩基性アミノ酸を置換した変異体を作製し、RNA結合に重要な残基を同定する。この変異体を用いてpiRNA生合成におけるGasZのRNA結合能の重要性を評価する。 【2, GasZとその相互作用因子を用いたin vitro反応系の構築】 GasZやその相互作用因子がpiRNAの特徴決定においてどのような役割を果たすかを明らかにするため、in vitro反応系の構築を行う。昨年度までに既にGasZだけでなくArmi, Piwi, Zucの組み換えタンパク質の精製方法は確立しているため、今後はこれらを反応させるbufferなどの条件検討を行う。GasZ, Armi, Piwiを様々な組み合わせでpiRNA前駆体と反応させ、そこにZucを加えることで、どのようにpiRNAの前駆体が切断を受けるかを観察する。内在piRNAと同様の切断が見られた場合は、各因子の変異体を作製し、より詳細な分子機構を解明する。
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