研究課題/領域番号 |
18J13645
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福井 祐生 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | アポカタスタシス / 万物回復論 / ニコライ・フョードロフ / ロシア宗教思想 / 東方キリスト教 / 自由意志 / ロシア・コスミズム |
研究実績の概要 |
1. 2018年6月末までロシア連邦モスクワ市ロシア人文国立大学に滞在し、同地における文献調査を行った。現地研究者の協力により、ニコライ・フョードロフ全集を始めとした多くの研究資料を入手した。 2. 2018年6月7日-10日にモスクワ市等において開催された第17回N. F. フョードロフ記念国際学術学会に参加した。同学会の一日目には、フョードロフ・エンサイクロペディアのプランに関する会合に出席した。三日目には、ニコライ・フョードロフにおける人類の統合原理について発表した。本発表に対する現地研究者からの意見を受けた。本発表の内容は、博士論文を構成する一部分の基になる予定である。 3. 2017年12月16日に国際学術学会「20世紀から21世紀の文学、芸術、哲学的思考における革命とコスモス」において行った、ニコライ・フョードロフにおける万物回復論と自由意志との両立に関する発表の新規性が認められ、この発表を基にした論文を『モスクワのソクラテス:ニコライ・フョードロヴィチ・フョードロフ(1829-1903)』に発表した。フョードロフの普遍救済論において、各人の自発的な悔い改めが不可欠であることを論じている。 4. ニコライ・フョードロフにおける記憶の問題について、ロシア思想史研究会において発表した。本発表の内容は、今後論文として投稿する予定である。 以上を通じて、ニコライ・フョードロフにおける万物回復論における自由意志の問題や、人類または宇宙の統合原理に関する研究を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長期間にわたるモスクワ滞在により、その厳しい気候や異質な食生活からか、体調面での影響は避けられなかったが、その期間に集めることができなかった資料については、2019年2月から3月にかけての短期モスクワ市滞在中に渉猟することができた。その上に、ロシア外の哲学との比較の可能性を再確認することができたのは大きな収穫であった。確かに、帰国後すぐに研究成果の発表へと移ることはできなかったけれども、その分ロシア滞在中に身に付けた知識やネットワークを生かして、研究を進めることができている。今年度の研究によって、今後執筆すべき博士論文の方向性がある程度明らかになったことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に研究成果を効率よく発表できなかった一つの理由として、ロシアから帰国して崩れた体調を立て直しながら研究することに集中している間に、発表することができたかもしれない学会や研究雑誌の〆切を悉く見逃してしまったことが挙げられる。そのため、今期はどの時期にどの学会で発表するかを計画し、それに基づいて、学会への加入などを進めている。 また、ロシア滞在中における現地研究者との研究会や懇談等を通じて、フョードロフのテキストを探求していく方向性を発見することができた。これに基づいて、フョードロフの重要テキストを時間をかけて考察する作業を行っており、今後も継続する所存である。 それに加えて、現地での資料調査から明らかになった、同時代のヨーロッパ哲学との類似性にも注目し、外部の読書会などを利用しながら、より重層的な研究を目指していきたいと考えている。
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