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2018 年度 実績報告書

FoxA1によるクロマチンにおける標的DNA認識機構と高次構造への影響

研究課題

研究課題/領域番号 18J13668
研究機関早稲田大学

研究代表者

田中 大貴  早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2018-04-25 – 2020-03-31
キーワードクロマチン / ヌクレオソーム / パイオニア転写因子 / ヒストン
研究実績の概要

真核生物のゲノムDNAはヌクレオソーム構造を基本単位としたクロマチン構造を形成して核内に収納されている。クロマチンはその構造を動的に変化させることによって、転写・複製・組換えといったDNAの機能発現を制御している。転写因子は、ゲノム上の標的塩基配列に結合して標的遺伝子の転写を調節する。多くの転写因子は、ヌクレオソーム構造を形成したゲノムDNAには結合できないことが知られている。一方で、FoxA1に代表されるパイオニア転写因子は通常の転写因子が結合できないヌクレオソーム上の標的塩基配列に結合し、クロマチン高次構造を局所的に変化させることが示唆されている。本研究では、代表的なパイオニアであるFoxA1に着目し、FoxA1よる標的ヌクレオソーム認識機構と、結合によるクロマチン構造変換機構の解明を目指している。
平成30年度は、FoxA1と協調的に働くとされるパイオニア転写因子GATA3に着目し、解析を新たにはじめた。その結果、GATA3は標的ヌクレオソームに対して配列特異的に効率よく結合することを見出した。さらに、GATA3-標的ヌクレオソーム複合体を高純度に精製する方法を確立した。
また、構造解析に適した安定な複合体を調製するために、安定なヌクレオソームを形成するようなヒストンバリアントやアイソフォームのスクリーニングを行った結果、ヒストンH2Aのバリアントの一つであるH2A.Jを含んだヌクレオソームは高い熱安定性を示すことを明らかにした。更にH2A.Jを含んだヌクレオソームを結晶化し、X線回折実験を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

パイオニア転写因子によるクロマチン認識機構の解明を目標として研究に取り組んできた。本年度は、パイオニア転写因子FoxA1およびGATA3に着目し、標的ヌクレオソームとの複合体の構造・機能解析を行ってきた。その結果、特にGATA3については、GATA3が標的ヌクレオソームに配列特異的に結合することを見出した。さらに、GATA3-標的ヌクレオソーム複合体の精製系を検討した結果、ショ糖密度勾配遠心法と架橋剤による架橋を組み合わせたGraFix法により、複合体を高純度に調製することに成功した。
また、構造解析に適した安定な複合体を調製するために、安定なヌクレオソームを形成するようなヒストンバリアントやヒストンアイソフォームのスクリーニングを行った。その結果、ヒストンH2Aのバリアントの一つであるH2A.Jを含んだヌクレオソームは高い熱安定性を示すことを明らかにし、X線結晶構造解析によってその立体構造を明らかにしつつある。これらのことから、研究はおおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

平成30年度の研究において、架橋剤とショ糖の密度勾配遠心法(GraFix法)によってGATA3-標的ヌクレオソーム複合体の調製に成功した。そこで平成31年度は、調製したGATA3-標的ヌクレオソーム複合体を用いて、調製した複合体をクライオ電子顕微鏡による単粒子解析によって、その立体構造を高分解能で決定する。また、GATA3標的塩基配列の位置をずらした標的ヌクレオソームを作成し、異なる位置にGATA3が結合したGATA3-標的ヌクレオソーム複合体についても立体構造の解析を行う。
GATA3-標的ヌクレオソーム複合体の調製法を検討した際の経験をいかして、FoxA1-標的ヌクレオソーム複合体についても、その調製方法を検討する。良質なサンプルが精製できた後、結晶化スクリーニングを行う。良質な結晶が得られ次第、大型放射光施設(SPring-8またはPhoton Factory)にてX線回折実験を行い、回折データを収集する。加えてクライオ電子顕微鏡による単粒子解析を並行して行うことで、FoxA1-標的ヌクレオソーム複合体の立体構造の解析を進める。
また、FoxA1とGATA3による協調的なクロマチン構造への影響を解析するために、標的ヌクレオソームに対してFoxA1およびGATA3を同時に加えた際の結合解析や立体構造の変化を解析する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] パイオニア転写因子GATA3によるヌクレオソーム中の標的塩基配列認識機構の解析2019

    • 著者名/発表者名
      田中大貴, 熊川雄祐, 滝沢由政, 小山昌子, 高久誉大, Paul A. Wade, 胡桃坂仁志
    • 学会等名
      第36回染色体ワークショップ・第17回核ダイナミクス研究会
  • [学会発表] パイオニア転写因子の標的となるALB1ヌクレオソームの解析2018

    • 著者名/発表者名
      田中大貴, 滝沢由政, 町田晋一, 小山昌子, 前原一満, 大川恭行, Paul A. Wade, Matthias Wolf, 胡桃坂仁志
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
  • [学会発表] The binding of GATA3 to the target nucleosome and its effects on the nucleosome stability2018

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Tanaka, Yusuke Kumagawa, Masako Koyama, Motoki Takaku, Paul A. Wade, Hitoshi Kurumizaka
    • 学会等名
      the 11th 3R+3C Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] パイオニア転写因子GATA3の結合がヌクレオソームへ与える影響2018

    • 著者名/発表者名
      田中大貴, 熊川雄祐, 小山昌子, 高久誉大, Paul A. Wade, 胡桃坂仁志
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会

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公開日: 2019-12-27  

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