研究課題/領域番号 |
18J13702
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中村 悠 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | アライン / チオシリル化 / オキシシリル化 / Grignard反応剤 / 金触媒 / ヘテロ環化合物 |
研究実績の概要 |
シリルスルフィドと3-トリフリルオキシアラインとの反応による3-チオアライン前駆体の簡便合成法の開発に取り組んだ。その結果、シリルスルフィド存在下、塩化メチレン中で、1,3-ビス(トリフリルオキシ)-2-ヨードベンゼンに対してシリルメチルGrignard反応剤を作用させることで、3-トリフリルオキシアラインに対するチオシリル化反応が効率よく進行し、3-チオアライン前駆体を簡便合成できることを明らかにした。また、様々なシリルスルフィドを用いることにより、多様性に富んだ3-チオアライン前駆体の合成にも成功した。 次に、シリルエーテルと3-トリフリルオキシアラインとの反応による3-オキシアライン前駆体の簡便合成法の開発に取り組んだ。その結果、シリルエーテル存在下、トルエン中で、1,3-ビス(トリフリルオキシ)-2-ヨードベンゼンに対してシリルメチルGrignard反応剤を作用させることで、3-トリフリルオキシアラインに対するオキシシリル化反応が効率よく進行し、3-オキシアライン前駆体を簡便合成できることを明らかにした。 さらに、ベンズトリインを利用する多置換芳香族化合物の合成について、種々検討を行う中で、o-ヨードアリールトリフラート型のアライン前駆体の修飾に、金触媒を利用した反応が有効であることを見いだした。具体的には、o-ヨードアリールトリフラート型の3-プロパルギルオキシアライン前駆体に対して、カチオン性金触媒を作用させることで、ヨード基やトリフリルオキシ基を損なうことなく、ピラノベンザイン前駆体の簡便合成に成功した。さらに、得られた前駆体に対して、アライノフィル存在下、シリルメチルGrignard反応剤を活性化剤として作用させると、ピラノベンザインを効率よく発生・変換できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度において、期待を大きく上回る研究成果を挙げた。具体的には、(1)シリルスルフィドを用いた3-トリフリルオキシアラインのチオシリル化反応によって、3-チオアライン前駆体を簡便合成できた。また、(2) シリルエーテルを用いた3-トリフリルオキシアラインのオキシシリル化反応によって、3-オキシアライン前駆体の簡便合成にも成功した。さらに、(3)3位にプロパルギルオキシ基を有するo-ヨードアリールトリフラート型アライン前駆体に対して、カチオン性金触媒を作用させることで、繊細なヨード基やトリフリルオキシ基を損なうことなく、ピラノベンザイン前駆体を簡便合成できることを明らかにした。 これらの成果は、第75回有機合成化学協会関東支部シンポジウムや第48回複素環化学討論会において発表した。とくに、第75回有機合成化学協会関東支部シンポジウムにおいて高く評価され、若手講演賞を受賞したことや、国際学会であるMACOSでは、Chem Lett Young Awardを受賞したことからも、得られた成果のインパクトの高さは明らかである。今後、国際学術誌にて成果発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に確立できた、アラインのチオシリル化反応およびオキシシリル化反応から得られた知見を基盤として、P-シリルホスフィンを用いた3-ホスフィノアライン前駆体の簡便合成法の開発を行い、3-ホスフィノアラインの反応性等の性質についても明らかにする。さらに、ベンズトリイン等価体を利用したヘテロ-シリル化反応の条件検討を行い、様々なヘテロ元素を含む5種類の置換基を有するベンゼン類の合成を目指す。本研究によって確立した「アラインリレー法」を利用することで、長波長蛍光で大きなStokes shiftを示す5-アミノクマリンの様々な誘導体を合成し、ライブラリーの構築、蛍光特性の評価も行う予定である。また、昨年度に見いだした金触媒を利用するヘテロアライン前駆体合成法についても、「アラインリレー法」と組み合わせることにより、より幅広いヘテロアライン前駆体の合成に取り組む。
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