研究実績の概要 |
1.ビスキャビタンドのエントロピー駆動によるゲスト包接 生体分子を模倣するためにアロステリックレセプターは盛んに開発されてきた。通常, 協同的に制御される分子認識系を構築するためには,複数の包接部位が構造的に連結された特殊なホスト分子の開発が必要とされる。エフェクターの結合により基質の構造が変化し, 他の包接部位が事前組織化されることで,ゲスト分子との錯形成反応が促進される。私は四本のアルキル鎖で連結されたビスキャビタンド分子がアンモニウム塩と結合するとき,正の協同性が発現することを報告している。このビスキャビタンド分子の会合挙動について詳細に調べたところ,ホスト分子と一つ目のゲスト包接はエンタルピー駆動であったが,二つ目のゲスト包接は非常に珍しいエントロピー駆動であることがわかった。
2.不斉増殖により誘導される超分子らせんポリマーの不斉空間 生体内において酵素は不斉空間を利用して高効率・高選択な不斉合成を行っている。人類は主に金属触媒のキラルな配位子場を用いた不斉合成法の開発に成功しているが,不斉空間を利用した分子変換技術に関して知見は限られている。我々はキャビタンド分子の金属配位による自己集合キラルカプセルを開発している。そこで私は,この超分子キラルカプセルを構造的に連結させた超分子らせんポリマー合成し,不斉増殖効果により空の不斉空間を提供することを考えた。我々が開発したビスキャビタンド分子は構造的にリンクしているため,修飾したビスキャビタンド分子に金属配位により超分子らせんポリマーを与える。 そこで,モノマーとなるビスキャビタンド分子の合成ルートの開拓をおこなった。また,原子間力顕微鏡によりらせん構造の観測にも成功した。
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