(1.トリスレゾルシンアレーンの合成)複数の包接サイトをもつホスト分子は分子触媒や超分子ネットワークポリマーへの応用が期待できる。しかし,複数の包接サイトを連結したホスト分子の合成は多段階を要する。出発物質として奇数のアルキル鎖で連結されたジアセタールを用いた縮環反応を行ったところ,三つのレゾルシンアレーンが六本のアルキル鎖によって連結されたトリスレゾルシンアレーンが得られた。 (2.ビスキャビタンドの配座解析)ビスレゾルシンアレーンは二つの包接部位がねじれたらせん構造を有する。らせん反転における活性化パラメータを求めたところ,らせん反転は対称性の高い構造を遷移構造として起こっていることが示唆された。さらに,分子構造とらせん反転機構の相関を詳細に調査するために,様々な置換基により修飾したビスキャビタンド分子を合成した。同様に活性化パラメータを求めたところ,置換基の構造に関わらずらせん反転機構は同じであることがわかった。 (3.ビスキャビタンドのエントロピー駆動によるゲスト包接)生体分子を模倣するためにアロステリックレセプターは盛んに開発されてきた。ビスキャビタンド分子のアンモニウム塩に対する会合挙動について調べたところ,ゲスト包接はエントロピー駆動の協同性を発現していることがわかった。 (4.不斉増殖により誘導される超分子らせんポリマーの不斉空間)人類はキラルな配位子場を用いた不斉合成法の開発に成功しているが,不斉空間を利用した分子変換技術に関して知見は限られている。我々は自己集合キラルカプセルを開発している。そこで,キラルカプセルを構造的に連結させた超分子らせんポリマー合成し,不斉増殖効果により空の不斉空間を提供することを考えた。我々が開発したビスキャビタンド分子は構造的にリンクしているため,ビスキャビタンド分子の自己集合により超分子らせんポリマーを与えることがわかった。
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