研究課題/領域番号 |
18J13918
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
水野 尚人 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 震源決定手法 / 類似検索 / マッチドフィルター / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本年度は震源決定手法の一種であるマッチドフィルターの高速化と、深層学習を用いたイベント判別法の開発について取り組んだ。 マッチドフィルターの高速化はApproximate Nearest Neighborとして問題を整理し直すことでの高速化を図っているが、解くべき問題が高次元であることや検出したいイベントとテンプレートとの相関がそれほど大きくないことにより、既存のアルゴリズムを適用するだけでは大きな改善が見込めないことが分かってきた。これを解決するため、データの前処理が必須かつ有効であると考え次元削減等のアルゴリズムの適用を検討している。また、マッチドフィルターのアルゴリズム自体の改良にも取り組んだ。これにはイベントの検出数だけでなく誤検出の割合も知る必要があったが、天然の現象に対して誤検出かどうかを正確に判定するのは困難が伴う。検出に用いるデータと性能のテストに用いるデータを分割することで、シンプルな方法で誤検出率の上限を求めることが可能であることが明らかとなった。 また、深層学習を用いたイベント判別法についての研究を行なった。これはエンベロープ相関法で決定されたイベントを地震と深部微動に分けることを目的として設計されたアルゴリズムである。エンベロープ相関法では一つの震源でシグナルが発生していることのみを仮定しているため、通常の地震も深部微動と同様に検出される。したがって、これらを分類する必要があり、先行研究ではSTA/LTAやシグナルの継続時間といった特徴量によって決められていた。しかしながら、これらの方法では微動のみを検出するには閾値を厳しくする必要があり、検出されるイベント数を減らす要因となっていた。本手法ではspectrogramを直接ニューラルネットワークに入力することでより精密な判別が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
類似検索を用いたマッチドフィルターの高速化はデータの特徴を利用した手法の適用が当初より予想されており、計画通りデータの性質についての知見が得られた。これにより、マッチドフィルターのアルゴリズム自体の改善につながる結果も得られた。また、従来の震源決定手法を補完する形での機械学習の応用についても成果が得られ、地震や深部微動の検出において有用であることが示された。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
マッチドフィルターを改良することにより、現実の現象の特徴を利用した手法を考案し検出率・精度のよい震源カタログを構築する。構築した震源カタログを用いて断層面で発生している現象の詳細な描像を調べる。例えば、深部微動の短期的なマイグレーションの描像をより詳細に捉えることや、微小地震の発生・移動を調べることによる大地震前のスロースリップの検出を検討する。このような微小な活動を手がかりとして、沈み込み帯全体の物理プロセスを考察する。
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