研究課題/領域番号 |
18J13968
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
宮地 優悟 島根大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2018-04-25 – 2020-03-31
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キーワード | 超伝導 / 高温超伝導体 / 結晶成長 / 液相成長 |
研究実績の概要 |
RE123超伝導線材の成膜手法としては気相法や有機金属分解法が現在主流であるが、より低コストな手法として、低温環境で高品位なREBa2Cu3Oy(RE=Rare Earth; RE123) を成膜できる溶融水酸化物法が挙げられる。しかし、この手法は現在、長尺線材の形成に必要な連続的な結晶成長には適していない。そこで、電気化学合成法の応用による連続的な結晶成長のプロセスの確立を目的として実験を行った。 フラックスには計50gの水酸化ナトリウムと水酸化バリウム8水和物を39:61の重量比で混合した物を用いた。原料には1.75gの酸化ユウロピウムと1gの酸化銅(I)を用いた。グローブボックス内に配置した電気炉の中に、フラックスと原料が入ったるつぼを配置し、410°Cまで昇温した。グローブボックス内には室温でバブラーを用いて高湿度にした窒素ガスを流して実験を行った。グローブボックス内の酸素濃度はジルコニア式酸素濃度系を用いて測定した。電気化学合成にはオートマチックポラリゼーションシステムを用い、三極式によって析出実験を行った。カウンター電極並びに参照電極には直径1mmのプラチナ線を、作用電極には幅5mmのAgテープを用いた。析出した結晶相や、るつぼに沈殿した析出物は水とエタノールにて洗浄後、XRD測定にて結晶相同定の評価を行った。Agテープ上に結晶が析出したのは、溶液の昇温から3時間経過し、2時間電気析出を行った試料であった。このAgテープ状に析出した結晶のXRD結果では、Eu123相の形成は確認できなかった。昇温から15時間以上の経過した析出実験では、Agテープが溶けてしまい、結晶の析出は確認できなかった。析出実験後、るつぼに残った溶液中には結晶様物質の沈殿が確認できたが、これらがEu123相ではないことがXRD結果より確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
装置の作製や予備実験に予定よりも時間がかかっており、また、先行研究で報告されているように、RE123の電気化学合成時に用いる溶液の安定化にある程度のノウハウが必要であると考えられるため、現状においては電極上へのRE123の析出が出来ていない。また電極の溶け出しなどの問題が発生している。先行研究においては電極が溶けだす条件は、①乾燥空気中で平衡状態になった溶液を用いて析出を行うこと、②溶液の温度が450°C程度の高温であることが報告されている。今回の実験条件においては、室温のバブラーで高湿度にした窒素ガスをグローブボックスにフローしながら実験を行ったが、グローブボックス内の湿度を測定していなかった。バブラーの能力不足によるグローブボックスの乾燥が電極溶け出しの原因である可能性が挙げられる。今回、電気炉を410°Cに設定し実験したが、予備実験では設定温度と溶液の温度に大きな差は確認されていなかった。しかし、析出中の電極付近の温度は測定できていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
溶液の昇温後2-3時間の短時間において電極上へ結晶を得ることには成功していることから、より詳細に析出条件を検討することによって、電極上へのRE123相の形成が期待できる。また、電極近くの温度を測定できるよう、装置を改良する必要があると考えられる。次年度においてはグローブボックス内への湿度計の設置と、電極部の温度測定を行いながら、なるべく先行研究と近い条件で実験を行う。再度、銀テープ状へのRE123の析出を試み、速やかに種々のREや電極上へ析出実験が出来るように進める予定である。
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